エレエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエェンッ!!
降臨!
降臨!!
降臨!!!
ダアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!
……はぁ……はぁっ……あまりに面白すぎて、我を忘れてしまったが。
いやぁ、おもしろかった。
俺の中の荒ぶる魂……モテないスピリットが呼び覚まされ、怒りの産声を上げたぜっ!!
エレエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエンッ!!
もう止まらない気分ですね!
エレン、エレン、エレン! ですね!!
……いや、俺の感想は正直アテにならないですよ?
ただでさえ、町山智浩さんの信者なのに。さらに東宝の奴隷のようなものでね。
もう、最初の東宝のマークが出ただけで泣けたもん。
……いや、久々に東宝映画観たってのもあるんだけどね。
怪獣映画を子供の時に見てたときはたくさん会う機会があったけど、この歳になるとね……。すごい久々に再開したよ。
で、OPのあの絵が出てきてね。
号泣すんぜんなんだけどね。もうこの時点で五億点出てるんだけどね。お前、絶対アテにならねぇだろって言われても言い返せないんだが。
だが、……だが、やっぱり言いたい。
それでも俺は、この映画がおもしろいと! おもしろかったと!
いや、アンチ派の意見も分かるんだよ。てか、絶対お前等がキレてるのってここだよな!? ってのが。
もう、ありありと分かる。
そう、これは俺のモテないスピリットを呼び起こすような映画なんだ。
(おいおい、進撃の巨人にモテないスピリットって何だよ……と思われるだろう)
だが関係あるんだよ!
これは、モテなかった者達の魂が――英霊達の声が!! ほとばしる映画なんだよ!!!
冒頭で、アルミンとミカサはエレンを探しにいく。
何でも、あれ。壁の修復作業員だっけか?
あれの仕事を辞めたんだと。
しかも、仕事を辞めたってのはその件だけじゃなく、過去にも多数あるようだ。
そう、この映画のエレンはちょっと現実を反映してるよね。
というか、フリーターというか……でも、こういう人って現実にいるよね。
で、アルミンとミサカはエレンを見つける。
彼は小高い丘にある不発弾の上に乗って、壁をにらんでいたんだ。
最初は仕事を辞めたことを問われそうだったが、不発弾の上にいたから、そんなとこにいると危ないよと注意される。だが、エレンはむしろ「爆発すればいい」という。
そして、彼は壁をにらむ。
何で仕事を辞めたの? と聞けば、彼は「壁の中で満足か?」と答える。
とんだ、ニートだが。
もうここで、進撃の巨人のテーマが描かれて良いよね。こういうのは、『インターステラー』の冒頭、宇宙飛行士がいなくなったってセリフでも、俺はウルッときたけど。
エレンは、内地に行きたいと思わないか、二人に聞く。(彼らがいるとこより、もっと内側の壁にあるとこ。貴族などお偉いさんが住むような)
アルミンとミカサがかぶりを振ると、「じゃあ壁の外は!?」と聞く。
そう、彼はこの壁に囲われたここが心底嫌なんだね。
ここじゃないどこかへ。
どの映画も、いや小説も漫画も――言ってしまえば、これにつきる。
ここじゃないどこかへ。現実に満足できず、ただ働くだけの毎日、恋人のご機嫌をうかがう日々――そんな日常から離れたくて、逃れたくて、ある作品では遠いとこに行こうとするし。または、何かを壊そうとする。ファンタジーでも、SFでも何でもそれは変わらない。どれもこれも、ここじゃないどこかへ行こうとする話だ。
エレンにとっては、この壁に囲まれ、ここで死ぬしかない現実が死ぬほど嫌だったんだ。
だから彼は言ったんだね。
あんな壁、ぶっ壊れれてしまえばって。
皮肉にも、それはすぐに叶うことになる。
具体的にいうと、巨人によって壊される。
もはや『進撃の巨人』のシンボルにもなっている、あの血管や筋肉むきだしのあの巨人だ。
あいつがいきなり、壁の上から「ぬっ」と現れて、壁に穴を空けた。
そこから大量の巨人達が攻め込んできた。
ここからの展開はすさまじい。
あまりの出来事に、憲兵隊(? なのかな)の人々はすぐ動けないんだ。これは映画だけじゃなく、俺も現実で体験したことがある。あまりにも現実離れしたことがあると、人って停止しちゃうんだよ。俺は目の前で、車が電柱にぶつかったのを目撃したことがあるが、しばらく体が止まっちゃったよ。そう、憲兵隊の人々はそばに大砲があるのに、全然撃てないんだよ。
その間にも巨人はやって来る。
彼らを止めるためのバリケードも、足止めにもならず、越えられる。
飛びこえられるんじゃない。越えられるんだ。ただ、歩くだけで。
街の人々は巨人に大慌てで、阿鼻叫喚、逃げまくるのだがどんなに逃げてもアリが人間から逃れようとするもの。あっさり追いつかれ、指でつままれ、食われる。
いや、最初に食われたのは憲兵隊だったかな? あの服着てたし。
その食われ方もえぐくてね。
簡単にかみ切れないから、頭をそらして食いちぎるんだ。ほら、固い肉を食いちぎるとき人間がやるような――ブチィッ!! って音がしたよ。
そのあとも、両手両足を引っ張られたり千切られたり。
指でつままれ、食われたり。そりゃもうえぐい地獄絵図の有様で。
エレン達も慌てて逃げるんだ。
皮肉だね。エレンの望みは一瞬で叶えられた。そう、最悪の形で彼の夢は実現したんだ。だが彼は、他の群衆のように恐怖で逃げるしかできなかった。
『ニコラ』って映画があるんだが。
それのキャッチコピーが好きでね。この場面はそのキャッチコピーがふさわしい。
ニコラ、きみが見た悪夢を一つだけ叶えてあげよう。
途中でアルミンとはぐれ。
エレンとミカサの二人に。
で、たまたま赤子を抱えて、パニックで必死に右往左往してる群衆の中でじっと座っている母親を見つけた。エレンは母親を助けるが、赤子は置きっぱ。
で、ミカサは赤子を助けるんだ。
だが、その間にエレンは群衆の流れに巻き込まれ、教会の中にのみこまれるんだね。
しかし、皮肉なことにそこは安全なんだ。
そりゃそうだろ。あんな化け物が襲ってきたら、誰だって大きな建物に隠れようと思うだろ。エレンはミカサを助けるために出ようとするんだが止められる。てめっ、何すんだって思ったとき――
ミカサの前に、巨人が現れた。
あ、死んだ。
一瞬の間だったけど。
もう、誰もがそう思うような瞬間だった。
それは観客だけじゃない。
ミカサも、エレンも、そう感じたんだ。
彼らが絶対的な絶望につつまれたのは、観客もすぐに分かった。
だから、このときのエレンの絶望もすさまじかった。
直後、爆発音。
エレンはようやく教会の外に出られるがミカサはもうおらず、辺りは荒廃した街並み。人の死体、血肉、血という血――死体。
(ミカサは――死んだ?)
と、思うしかないようなシーンだった。
で、うしろで音がしてふり向くと、さっきの教会が襲われててね。
屋根をはぎとられ、巨人に食われてた。
これもまた皮肉だ。まるで、ここにさっきまでいたエレンを罰するようだった。
彼を外に出して食わせないことで、より罰であることが鮮明だった。
閉ざされたドアの下からは、大量の血。
エレンは絶望にくれたまま、その場をあとにするんだが。
そう、ここが大きな違いなんだ。
原作では母親を殺されるエレン。
だが、実写版ではもっと前に死んでるらしいんだよね。どうしてかは分からないけど。
だから、ここで失ったのはミカサだ。
いや、もっと具体的に言うとエレンを構成していたもの全てだったと言っていい。
壁の外に出たい、ぶち壊したいという願いは巨人が叶えた。
そして、街の人々を虐殺した。
学校を壊してくれと怪獣に願って後悔する子供のよう。
原作のエレンは、母親を殺されるけど、これってある意味、プラスでもあるんだよね。こう言っちゃ何だけど。
彼はここで『……駆逐してやる』と言うんだ。
そう、誰よりも深い、熱い、目的意識。
それが、原作ではあった。
だが実写版では、それがない。彼は奪われただけじゃない。
失ったんだ。
誰のせいで? 何よりも、自分自身のせいで。
彼は、ミカサが死にそうだったときに助けられなかった。『あ、死んだ』と思って出られなかった。
出ても無意味だと、一瞬でさとってしまったんだ。
それでも、彼は途中まではミカサを殺されたことの恨みが……で、戦おうとしたんだね。
だが、兵団に入ってすぐ。
彼はミカサが生きていたことを知る。
目の前に彼女の姿まで見つけてね。
彼は「よかった……」とミカサにいうが、彼女は巨人につけられた傷を見せるんだよ。
「喰われたわ……」と、脇腹の傷を。
言葉にはしなかったけど、これは明確な意志が宿っている。
何で私を助けてくれなかったの?
その上、ミカサはキリシマと仲が良い……というか、恋仲のようにも見える関係でね。
NTR! そう、これはNTRだよ!
ミカサはリンゴを食べたりするんだよ。キリシマが一度クチづけたリンゴを! 間接キス! このときの若者なんて間接キスはSEXのようなもの! もうあれは、NTRのメタファーだよ! てか、明確なNTRだよ!
ここでエレンは完全に全てを失ってしまうんだ。
巨人が現れて、夢を失い。
ミカサを助けられなかったことで誇りを失った。
さらに、そのミカサが生きてて……彼女に突きつけられ、しかもキリシマとイチャイチャしてるのも見せつけられて、彼はミカサまで失い……。
ほんとね。
原作だとエレンって、ミカサがいるじゃない。
それには深い理由があるんだけど。実写版にはなくてさ。
『進撃の巨人』でミカサを失うと、これほどとは思わなかったよ。
ミカサはエレンを全面的に肯定する存在だ。
例え彼が巨人でも余裕でつきあえる。許してくれる存在。
エレンが敵に捕まったときも必死になって助けに行く存在。
守護天使のような女性だったんだね。
それが、いなくなっちゃうんだよ。
皮肉にも、エレン自身の手で、と言ってもいい。
しかも、そのあとに何もかも損失したエレンに、シングルマザーの女が誘惑するしさ。
いや、その以降も大変なんだけどね。
その女も巨人に喰われてね。
くそっ! ちきしょう! と、もうエレンの中はめちゃくちゃだ。
そんなエレンに、キリシマはささやくんだ。
「とんでみろよ」と。
町山さんが何度も映画解説でいってたリープオブフェイスだね。
部族の通過儀礼など。他にも日本の昔の奉公に出たりするだのが例だ。
昔の人間って通過儀礼が必ずあったんだ。
死に直面するような場面を乗り越えることで、子供から大人になるための儀式。
これは現実だけじゃなく、主人公を強くさせるためにフィクションでも使われるが。(例でいえば、『あまちゃん』とか。他にも山ほどあるが)
だから、エレンはとぼうとするんだ!
そしてうまいこと巨人を倒す!
だが、彼は途中で足を喰われて倒れてしまった……。
しまいにはアルミンを助けようとして代わりに呑み込まれてしまう……。
夢も誇りも失い、ミカサもいなくなった。
最後の望みでとんでみたら、巨人に足を喰われて。そして、今は巨人の胃の中。
で、その巨人はどうやらさっきのシングルマザーの女を喰った奴らしくてね。
胃の中で再開して「大丈夫か!」と叫ぶんだが、彼女はもう……顔半分が溶けていて……。
そう、ここで来るんだよ。エレンの名台詞が!
「……駆逐してやる」
ここで、降臨だよ。
降臨っ!!
もう俺は叫びそうになったね。
何もかも失うし。
ミカサはキリシマとイチャイチャして、あの出来杉……出来杉くんはまだキレイすぎて、汚れを知らないからそこが弱点のように思えるけど、キリシマは汚れさえも知ってるんだね。死角のない出来杉くんなんだ。
エレンよりも数倍強くて。
エレンよりもこの世界のことを知っている存在。
エレンが助けられなくてもミカサが惚れてしまいそうな――
そこまで徹底的に失って、奪われた挙げ句。
エレンは喰われるんだよ。
もう、ここまで来たら変身しかないだろ!?
巨人になって喰らうしかないだろ!!!
あの野郎! 俺のミカサを奪いやがって!!! キリシマッ!!!! 巨人も巨人でてめぇこの野郎!!!!!!!
最後は後編への展開が期待できるような終わり方でね。
ほんと、荒ぶる魂――モテないスピリットが咆吼する瞬間だったよ。
スタッフロールで町山智浩さんの名前が出たときは感動したね。
町山さんは、『あまちゃん』を語ったときに、「小池徹平に感情移入するとは思わなかったよぉ~」って言ってたんだ。
それがまさか、『あまちゃん』では残念なイケメンになってモテないんだなんて。
だから町山さんは感情移入したんだね。
……まさか。
まさか、その町山さんが、『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』で行うとは思わなかったけどな!
ひどい人だよ、町山さんは!
俺もまさか三浦春馬に感情移入するとは思わなかったさ!
今作のエレンを演じた三浦春馬って、イケメン俳優で。
ドラマ『ブラッディ・マンデイ』では佐藤健をさしおいて主演だった人だよ!
それにまさか感情移入するとは!
徹底的に奪われ続けたエレンだけど、後編ではミカサとの関係も原作のようになっていくらしい。それこそ、原作以上に困難な戦いをしてね。(映画秘宝、参考)
戦うしかないんだよ!
ミカサの前で失態した!
びびった!
決定的に尊厳を失って、喰われそうになって――
でも、戦うしかないんだよ!
映画秘宝でも町山さんは言っていたが、散々、この仕事に参加するってことで叩かれて、馬鹿にされたらしくてね。でも……でも、それでも戦うと決めた。戦わなきゃ何もはじまらないから。何も変えられやしないから!
くそにまみれようが、胃液にまみれようが知ったことか!
モテないスピリットだろうが、負け犬魂だろうが、使えるモノは何だって使ってやる!
駆逐してやる!!
この荒ぶる魂を見せられたら、泣かない奴なんていないだろ。
号泣百億点だよ!!
原作との違いなんて、ドイツ風が日本風っとか。どうでもいいんだよ!
これは! 少なくてもこれは、この戦う意志は! 原作の『進撃の巨人』以上にあるんだよ!!
アンチでも、せめてそこだけは見てやってくれ!
……とねぇ。
ひたすら熱くなって語ったけど。
俺も改めて、負けてられねーやって思う映画だったね。
言いたい奴にはごちゃごちゃ言わせればいーんだよね。
それでも俺はやるぜ!
って、魂を感じる映画でした。
俺も負けてられねぇ! 駆逐してやるっ!!