自慢じゃないが、俺はモテない。
……本当に自慢にならないこと言ってるが、自慢にならないと言ってるのだから自慢にならないことを言っていて当たり前だ。ここで、自慢にしか思えないことを言ったら。例えば、俺はモテるだとか。俺は頭がいいだとか。顔がいいだとか、運動できるとか。そんなことぬかす奴は地獄に墜ちろっ!!
――はっ!!
思わず我を忘れてしまった。
ともかく、そんなモテないスピリットな俺だから。
映画や漫画でもモテない登場人物を見ると激しく共感し、打ち震える。
この前、ある偉人の小説を見ても打ち震えたが。
その人の薦めである『スターリングラード』に出てくるあのメガネ……さらにいえば、キャプテンアメリカ……進撃の巨人(実写版)のエレン……あいつらにひどく共感し、あいつらが泣けば俺も泣き、あいつらが怒れば俺もマグマのように怒り狂うのだが。
だが、たまにはモテる映画を見たりもする。
モテる映画?
何だそれは。
具体的に言うと、『007』である。
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『トゥモローネバーダイ』を見た。
昨今、巷では俺TUEEEEEや異世界転生がもて囃されているが。
ようは自分をラリさせる麻薬のようなものだ。
俺TUEEEEEEEEEは自分も最強であるかのような、気分になり。
異世界転生は、一度人生をやり直してリア充になる。
個人的にはどれも好まないが。
しかし、こういうのをやるのは何も日本だけじゃない。
007!
おっさんの俺TUEEEEEEを見ていて何だが。
007の場合は俺TUEEEEEEEEだけじゃなく、俺MOTEEEEEEEEEEEEEEERU! である。
そう、モテるのだ。
最初にドンパチあり。
次に現れるのはベッドシーン。
美女と朝のチュンチュンッ……をやりながらの仕事の電話だ。
いいな、俺もやってみたい。
あんなふうにモテたい!
全世界のモテないスピリットを奮い立たせ、胸を焦がす。
そう、本来なら俺達モテないスピリットの住人は光の世界――イケメンだとか、ジャニーズだとか、ジュノンボーイだとか――そういった者達を憎み、「ただじゃおかんぞ!」と怨嗟を撒き散らすはずなのだが――007まで突き抜けるとそんな感情すら湧かない。
植田いつ子先生は。
日本芸術は引き算の美だといったが。
逆に、西洋芸術は足し算の美だといった。
もう、それがありありと示されてね。
足し算、足し算、足し算!
爆破。
美女。
爆破。
銃撃。
美女。
爆破!
美女!!
爆破!!!
美女!!!! 美女!!!! キッス!!!!!!!!!
という。
足し算、足し算の繰り返しでね。
一瞬、主人公がピンチになって危うく引き算かと思っても、すぐさま足し算に変わる。
その鮮やかさ。
秘密兵器!
とりあえず爆破だ!
そして美女だ!!!!
と、もう一言でいえばとんでもねぇwww なんだが。
いやまぁ、娯楽映画だしね。
娯楽だと、やっぱここまで痛快だと笑えるものだ。
嫉妬すら涌かない。
相手は人間じゃないんだ。
もはや、ここまで来ると神話の怪物でしかない。
とりあえず、近づいた女性は全て虜にして。
敵はばったばった倒して。
与えられたアイテムを数秒で使いこなして。
ベッドイン! して。
そんな奴、人間じゃねぇよ!(泣
もうね。
これは世界中のモテないくんが見るべき映画です。
他の007も見るべきだよ。
スカイフォールはちょっと……こっち寄りというか。(え、お前、モテないスピリットなの?)と勘ぐってしまうが。いや、まぁね、気のせいで。
(いや、スカイフォールは面白いんだけどね)