映画秘宝exを見て、気になった映画で『ドック・バイト・ドック』というのがある。
実際、見てみたらおもしろかった。
とても荒々しく、ゆえに研ぎ澄まされ、最後は生命の息吹を感じさせる映画であった。
――こう書くとちょっと高尚な感じに聞こえるだろうか。
高尚なんて糞喰らえと思ってるので書かないが。
(いや、ときと場合によるが)
おわかりになっただろうか? と、『放送禁止』のようなことを言ってやろうかと思ったが。
ともかく、映画の感想である。
おもしろいのは変わらない。
冒頭から荒々しい。
荒波を航行する船、その中でおかゆっぽい(あれって中国映画でよく見るけど、何なの?)のを作ってるおばちゃん。おばちゃんは、船の下にいる住人にそれを渡そうと――しかし、波の衝撃で落としてしまう。
慌ててそれをかき集めて喰う男。
おばちゃん、ドン引き。
犬、ともかく犬である。
この、ドン引きされた男というのが話の中心角なのだが。
こいつ、陸に上がったら何をするかと思えば、料理屋で大量に飯を喰らい。
写真にうつってたおばちゃんを(船のとは違う)撃ち殺すんだよね。
しかも何発も。
一~二発撃ったあと、確認用に近づいて首筋に直接撃つ。
で、周りが騒然とする中、そのおばちゃんの夫が持っていた肉まんを食べてフツーに出て行くっていう。感情の欠片もない男。
その後とも警察から逃げるために見ず知らずの若い女性を撃ち殺し、警察官も殺す。
てめっ、この野郎と捕まえてみたら、親指を折って手錠を外し、パトカー内で暴行、そのまま逃亡、とんずらする。
野良犬というか、野に放たれたケルベロスのような男である。
そんな敵に対するのはワイという刑事。
こいつもこいつで乱暴で、ジャック・バウアーよろしく尋問という名の拷問をする。
しかも、こいつがタチ悪いのは事件のためならそれに関係ない者(関係ないというか、直接関係ないが情報は得られる人物)にも平気で暴力を振るうんだよね。
だが、皮肉かな。
どんなに荒くれ者に見えてもあぶない刑事に見えても、所詮は首輪をつけられた飼い犬。それこそ、本当のあぶない刑事だったら分からなかったが、ただのあぶない刑事でしかないワイは何度も返り討ちにある。
何度も犯人を追い詰めて、あと一歩ってところまでは行くんだけどね。
その度に逆転され、逃げられるんだ。
終盤になると仲間全員で捕まえにかかるが、彼以外全員殺され――その上、逃げられてしまう。
あげく、実の父親はリストカット。
彼の父親は尊敬すべき刑事だったが、実は麻薬の密売に関わっていたらしく、そして皮肉かな、と二度目だが息子であるワイ自身が追い詰めてしまっていたのだ。
――で、後半は舞台は香港(香港だよね)からカンボジアに変わる。
ここからは内容は一気に変わって、あんだけ残虐だった犯人が運命のような女と出会い、わりと温かくやっていたんだが――最後、ワイ刑事と出くわしてね。
ともかくもう、闘争以外なにものも許さない映画である。
ただ殴り、
ただ殺す。
だからこそ、この世で最も純粋なものが何の包み紙もなく、何のてらいもなく映し出される。
それが、どれほどキレイか。
どれほど、感動するか。
ともかく、この映画を見なきゃ分からないだろう。
『マッドマックス 怒りのデスロード』の、あのセリフに匹敵するようなシーンが、最後には待っている。
『ドッグ・バイト・ドッグ』。
あなたは犬だろうか。
それとも、犬にもなれないクズだろうか。
クズが嫌なら高らかに「わん!」じゃなく「ガウッ!」と喰い殺せ、なのである。
以上、蒼ノ下雷太郎でした!
した!