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蒼ノ下雷太郎のブログ

一応ライターであり、将来は小説家志望の蒼ノ下雷太郎のブログです。アイコンなどの画像は、キカプロコンでもらいました。

僕は2000年を振り返ろうと思う(「騒音の怪物」番外編) 第十一話 「010 学校4」

 はじめに

 *カクヨムに投稿している「騒音の怪物」の番外編です。

  最近の話で、ようやくこの番外編とつながってきました。

 

 

 これまでのまとめ。

僕は2000年を振り返ろうと思う(騒音の怪物 番外編) まとめ

 

 前回の話。

 第十話 「009 学校3」

 

 本編

   僕は2000年を振り返ろうと思う

                   第十一話 「010 学校4」

 四月五日。
 この頃は、桜が咲いていた気がする。
 僕が好きなのは枝が申しわけなさそうに垂れ下がり、日本独特の風景を見せる桜だ。
 僕が当時好きだったのは公園に咲いていた。
 建物と建物の間にある小さな公園。申しわけ程度に、市の予算が余ったから公園でも作っておけば文句は言われないだろうと作られたかのような、あまりにも小さな公園。砂場はなく、でもベンチと滑り台、小さなアスレチックがある。そして、何より桜の木が植えられている。四本か、五本か……いや、三・四本かな。小さい公園だし。
 桜の花びらはひらひらと――廃墟の外壁が剥がれ落ちるように、ゆっくりと散っていった。
 足下には大量の桜の屍。
 桜の木は雪がつもった雪山のようにそびえ立ち、少なくても春を過ぎて夏になっても溶けなそうな威圧感を見せていた。当時は。だがもちろん、桜の木は散った。桜の花びらは消えた。雪が溶けるよりも早く、その美しい景色は消えたのだ。


 僕はふとしたキッカケで、眼鏡をかけた少女と談笑している。
「そう、あの子と友達なんだね」
 箱守睦美(はこもりむつみ)。彼女と同じ女子校に通っていて、クラスメイト。
 友達らしい。
「……そう、図書館でばったり会ったんだ」
 僕らは喫茶店に入っていた。
 当時は中学生だったから、喫茶店に入るのは初めてで妙な緊張があった。それは彼女もいっしょだったようで、頼んだのは彼女の舌に合わないコーヒーだったらしい。このとき、大人だったらカフェオレでも注文してあげるのかな。このときの僕は余裕がなく、僕も僕で苦いコーヒーにどうしようか悩んでる最中だった。
 喫茶店の内装は落ち着いた雰囲気で、アメリカのカントリーソングが流れている。
 木目の床に天井。白い壁は所々、アメリカ文学から引用したらしい一節が書かれている。
「ここ、サリンジャー
「あ、ホントですね」
 僕が言うと、箱守さんはにっこりと笑った。
 こういっちゃ彼女に失礼だけど、彼女の友達にしては常識人だ。というか、まともだ。
 彼女の友達と聴いていたから、てっきり僕はサダム・フセインが大好きと言うのかと思ったけれど……いや、この頃はニュースで話題になってないか。というか、時期的におかしい? こんがらがる。
「箱守さんは? あの人、そんな気軽に話しかけられるとは思わないけど」
 僕と箱守さんが出会ったのはあの場所だ。
 図書館で彼女がいないかと探していたら、いつも座っていた席に彼女――いやあの危険な彼女じゃなくて、この安全そのものの箱守さんが座っていたんだ。
 何でも、今日は来られないから伝えてって。
 ……いや、わざわざ箱守さんを待たせて言わせるか、と思ったが。当時はケータイがまだ珍しかったし。いやいや、ホントだ。持ってる人は持っていたけれど。それに、ポケベルなんてそろそろ終わりを迎えていたはずだ。いや、これはちょっと記憶が定かか分からない。
「いえ、あの子。外面はいいんですよ? ……中身は、すごかったけど」
 マグカップを両手でつかみ、ちびちびと飲んでいく。
 思わず見とれていて、慌てて僕も飲んだフリをする。苦い。
「あの子、ワタシを助けてくれたんです」
「……箱守さんを?」
 彼女が人助け?
 悪党がボランティア並に似合わない単語だ。
 僕は眉をひそめるが、それを見てやっぱりと彼女は笑った。
「あなたのとこでも同じみたいですね」
「……嫌なことにね」
 お互い、妙な巡り合わせだというように苦笑した。
「あの子、ワタシをいじめから助けてくれたんですよ」
 その言葉に、僕は衝撃を受けてしまう。
 思わず、彼女の好感度が急激上昇し、天にまで昇りそうだった――が、すぐにやめた。
「ちなみに、どうやって助けたの?」
「たった一言です。一度、意見の相違である女子と口論になって、それでワタシが周りから無視されそうだったんですが……彼女の一言で終わりましたね」
 きもちわるい。
 タダ一言、その一言だったという。
 ああ……僕は納得した。
 いつもの彼女だ。
「……本当に気持ち悪そうに言ったんだね」
「……えぇ。この世にある軽蔑の表情を全て浮かべたら、かつ無駄なくスマートにしたら、あーなるんだっていう顔をしました。あれを見せられたら、全員が何かを奪われますよ」
 彼女は、気持ち悪いから言ったんだ。
 それが結果的に人助けになったから、よかったとは思う。
 だが、それだけで済ませられる話でもない。
 彼女は、集団の軋轢や抗争みたいなのが反吐が出るほど嫌いだったんだろう。

 殺したいとかそういう次元じゃない。

 あまりにも憎みすぎて炎が空間にこびりついてしまったかのような。消えても、存在が一生離れられなくなったかのような。
「彼女、集団が嫌いなんだろうね」
「ただでさえ人間が嫌いですよね。それがいっぱい集まると余計に嫌いになるって、ことなんでしょうね」
 僕と箱守さんの意見は同調する。 
 その通りだと、お互い思った。




 ――という、小説を彼女は僕に見せてきた。
「どうかしら?」
「……誰?」
 箱守さんって。

 というか、どうって。

 いや、その言葉しか思い浮かばないでしょ。あとは全てにおいて意味が分からない。

 

 

 あと。

 

 

 「騒音の怪物」はこちらになります。

kakuyomu.jp