はじめに
*スマホだと一部表記が乱れる可能性があります。
カクヨムに投稿している『7start 2.0』の番外編です。
I’ll これまでのまとめは。
I’ll 前回の話は。
I’ll(7start 2.0 番外編) 十二話「死にたくない」
本編
I’ll 第十三話「夢」
036
僕は――消えていく感覚を受ける。
意識が――沈んでいくかのようだ。
<i> しずんでいく </i>
<i> しずんで </i>
<i> 沈んで </i>
<i> 沈む </i>
<i> 沈 </i>
<i> 沈っ </i>
<i> 沈…… </i>
<i> 沈…… </i>
<i> 沈 </i>
……このまま、死ぬのかな。
……いやだな。
……死にたく、ないな。
脳裏に、リスの顔が浮かんだ。
……死にたく、ないなぁ。
転生なんてやだよ。
……生きて……生きて、やり直したい。
もう一度、どうやればあの戦いに生き残れるか。クジラだって……あと、Xに勝てるかも分からない。
でも……でも……リスに、もう一度……会いたい。
037
「アイル!!」「――おわっ!?」
衝撃で目が覚めると、眼前にリスがいて余計に声を上げる。「おおっ!?」
で、首を絞められる。
「何で、私を見て悲鳴を上げるのよぉ……」
「ぢ、ぢがう……ぞ、ぞういうわげじゃ……」
起きると、僕がいたのは木目の床に敷かれた布団の上だった。
見回すと僕以外にも負傷者が横たわっている。
二十畳以上はある大部屋。教室を利用した場所らしい。
窓ガラスからはライトの光がこぼれていて、明るい。
この中には僕以上に――凄惨なありさまの者もいるようで、その人は衝立代わりのカーテンで隠されていた。だが、ときおり聞こえる悲鳴が耳にひびく。
「……ここは?」
「負傷者の収容所」
もどったんだよ。
と、リスは微笑みながら言った。
(interface_guide)
これじゃ、夢オチと変わりませんね。
ぷんぷん。
(/interface_guide)
拡張現実で、視界にウィンドウが表示された。
ガイドも無事のようだ――いや、傷つくことがまずありえないのか。
僕の全身からは、湿布や塗り薬のにおいがする。
包帯もいくらか巻かれていて、とくに頭部や手足が重点的にされている。
見ると、リスも僕と似たようなものだ。彼女がいつも被っているニット帽は、そばに置かれていた。ビニール袋にまるごとつめられて。僕の衣服もそこにあるようだ。
「……どうやって?」
僕は重要なことを聞いた。
「九鴉さんが助けてくれたんだよ」
「え?」
九鴉が?
そんな、どうやって。
(interface_guide)
いや、爆発で煙が上がったでしょ。
(/interface_guide)
――あぁぁぁっ。
僕は納得する。
そりゃそうだ。あれだけドンパチやってれば、音も響いただろう。
(interface_guide)
運良く、九鴉もあの辺りと推察してたらしくてですね。
すぐに察知してくれたらしいですよ。
あなたが五体満足なのも、彼が殺されそうなあなたを救ったからです。
(/interface_guide)
と、思わず自分のカラダを確かめる。
上半身は胸に布が巻かれた程度で、露出。
腕やお腹など、切り傷や打撲を治すために塗り薬や湿布が貼ってあった。
……九鴉がいなかったら、この手足もどうなっていたことか。
ぞっとする。
「アイル?」
ぞっと……した。
「アイル」
リスは何も言わず、僕を抱きしめてくれた。
僕は、ありがとうを言うヒマもなく、泣いた。
038
意識が覚醒したら部屋から出てけと言われた。
ちょっと、ひどいんじゃないと文句を言おうとしたが――続々と運ばれる負傷者を見て、何も言えなくなった。
「……カバタ族」
僕の重々しい声に、リスがビクッと震える。
……震えることないじゃないか。
きみだって、あいつらに襲われただろう。
……クジラを、殺されたじゃないか。
(interface_guide)
一つ、忠告しておきますよ。
(/interface_guide)
ガイドが余計なクチ出しをしてくる。
何だよ、別にきみに何か言われなくても。
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リスは、サズカ族の出身です。
(/interface_guide)
「……ん?」
僕は突拍子もなく声を出す。
だが、この程度なら怪しまれることはない。
リスも気にしていない。
いや、僕はそれどころじゃなかったが。
……サズカ族?
それって……カバタ族を、あの僕らを襲ってきた二人組の親元のような。
(interface_guide)
そうですね。このテロの元凶です。
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「………」
僕は、冷や汗を垂らしてリスを見た。
そしてすぐに、一瞬抱いた恐怖を恥じてしまう。
リスは青白い表情で負傷者を見つめていた。
「リス」
彼女を彼岸から連れ去るように、呼びかけた。
「リス!」
彼女の手をにぎる。
「……ごめん」
あやまるなよ。
何で、あやまるんだよ。
「……ごめん、なさい」
「違うだろ」
きみのせいじゃ、ないだろ。
こんなとき、僕らを助けてくれた九鴉だったら、また何か違うことが言えたのかな。
あのXと戦って僕らを救出できるぐらいの人だ。
ナンバーズだ。
強いんだろうな……そんな人だったら、こんなときにも、もっとリスを助け、はげます言葉を出せるだろうに。
「きみは……きみは、わるくない」
ただ僕は、泣いて彼女の手をにぎるしかできなかった。
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……それだけで、十分だと思いますよ。
(/interface_guide)
ガイドが珍しく、優しい口調で言ってた気がするが無視した。
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さいごに
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