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蒼ノ下雷太郎のブログ

一応ライターであり、将来は小説家志望の蒼ノ下雷太郎のブログです。アイコンなどの画像は、キカプロコンでもらいました。

僕は2000年を振り返ろうと思う(騒音の怪物 番外編)      最終回 「013 「騒音の怪物」」

 はじめに

 *カクヨムで投稿されている「騒音の怪物」の番外編です。

 

  これまでのまとめ。

僕は2000年を振り返ろうと思う  まとめ

 

  前回の話。

第十三話「012 あのとき」

 

 本編

   僕は2000年を振り返ろうと思う

                    最終回 「013 「騒音の怪物」」

 

 僕にはそれが天使の輪っかに見えた。
 かすかに入る陽光がまぶしく、希望の天窓にさえ見える。

 

 叔父からもらった手紙を読んでみる。


『小説家になって苦労したことなど、何一つない。全部が良い経験で、楽しくて、豊かな人生だったよ。小説家になって、一片の悔いもなしと言えば大げさに聞こえるかもしれないが、実際その通りなんだ。少しの後悔もない。このまま小説の中に沈み込んでしまいたいくらいだ。我々は他人という読者がいないと何も出来ない者だよ。小説家は、この世で最も脆弱で貧弱な芸術家だよ。映画も、漫画も、音楽も、他にもなんでもいい。それらは単体で成り立つもので、読者がどうこう関係なく、美を発揮する。だが、小説はいつまでたっても読者ありきだ。読者しかありえない存在。青空一つ描写するにも読者のキャンバスを借りなきゃ何も描けないのだ――だが、だからこそ美しいと思った。人との対話、コミュニケーションが苦手な自分にとって、小説こそが唯一の対話に感じたからだ』


 嘘だ。
 僕は叔父からこんな手紙もらったことがない、これは僕がついさっき自分で創作して書いたものだ。
 創作した叔父の手紙を自室で破って、キッチンに行って燃やした。
 皿の上に燃えていく偽の手紙。
 せっかく館をキレイにしたばかりなのに、わざと汚そうとしてるのかチリヂリと灰が飛んでいく。

 

 叔父の知らせはまだ届いていない。
 あの人は小説を書くのが好きだから館にずっと居続けたけど、でも本来は旅好きな人なんだ。でなきゃ、小説のジャンルをあそこまで行ったり来たりしていない。本当はずっと同じ場所に居続けることなんて不可能な人なんだ。だから、あの人は小説に憧れた。
 見たこともない世界に――入ることができた。
「このまま……潜ってしまいたい、か」
 僕は想像する。
 自分の身体が大海原に放り出されるのを。ヘリコプターでも何でもいい、僕のカラダはいつのまにか運ばれていて、眠らされてるのだ、で急に海に落とされる。気がついたら、海の中にドバッーンと入り、沈む。バタバタと手足は悪あがき。声も上げるだろう。海に沈んでいく。気がついたら、その感覚が愛おしくなるのではないか。服が海水を吸収し、重りのようになる。まるで手で引っ張られるかのように、深遠な世界に連れてかれるかのように沈んでいく……叔父は、こんなものを望んでいたのか。
「………」
 天使の輪っかから、海の底まで到達できるだろうか。

 ここには、唯一出てこない幻がある。
 それは、叔父だ。
 あの大作家、よりにもよってあの叔父が出てきていないのだ。小説に対するエネルギーが一番強いはずのあの人が、何故出てこない。
 ……途中から段々と分かってきた。
 ここにいる幻は生きようとした証なんだ。
 だから、鈴野も、傘頭も、有田も、道川も出てきた。僕だって……さっき出てきた。
 そうだ。
 生きようとするエネルギーこそが、この世で最も美しい力。
 だからこそ、ここにいつまでも残っているんじゃないか。
 あの人達は中には死んだ人もいるけれど、それでも当時のエネルギーが美しかったから、今でも鮮明に残っているのでは。
「………」
 僕の幻はどうなるのかなと、煙草を吸ってみた。
 誰の部屋か忘れたが、見つけたのだ。僕が見たこともないもので、試しに吸ってみるとすごいまずかった。煙草自体が苦手だったから、まずはすさまじく、何度も水でクチを洗った。
 やはり、僕にはこんなものはいらない。
 必要ない。
「さよなら」
 僕は、ここまで書いてきた小説を机の引き出しにしまう。
 一つは「僕は2000年を振り返ろうと思う」で、ここから出る卒業作品のようなものだ。そして、もう一つはここのことを書いた日記。
 あれこれ考えてみたが……これが、これが僕の作品だった。
 僕自身を描くなら日記以上に最適な題材はない。
 これが、これが――僕の、「騒音の怪物」だった。
 本当に、幻なんて館に出てきたのか。
 細かなとこは読者の想像に任せる。
 だが、これだけは真実だ。
 僕は、キレイなものが好きだったんだ。

 

「……っ」

 

 ――ガタガタ、と部屋が揺れる。
 いや、館全体が震えてるようだ。
 ドンッ、またドンッ、と。
 巨大な太鼓が叩かれるように、何かが音を立てた。
「………」
 窓から、その轟音とともに――巨大な生物の姿が見えた。
 彼女は、その生物の頭に乗っていた。シュールな絵だが、非常に彼女らしいと笑った。

 


 おわり

 

 

 最後に

 ぼかしてるようで、ぼかしてない書き方ですが。

 主人公は何で妙に意味深な語り口なのか。

 宣伝になりますが、本編を見ていただければ幸いです。

 

 もう一つのブログ小説と交互に毎日更新なんて、しかも朝の早い時間帯に更新だなんて、随分と無茶をしてみましたが。これも一興。中々、ためになったと思います。

 願いましたら、みなさんの感想の声が聴けたらうれしいです。

 以上、蒼ノ下雷太郎でした-。

 

kakuyomu.jp