最近、ニコニコでやってる明智小五郎が主役の『江戸川乱歩の美女シリーズ』ばっかり見ている。
この力強い眼光。
天知茂さんという俳優で、座頭市シリーズの記念すべき一作目『座頭市物語』で、勝新太郎演ずる座頭市のライバル・平手造酒を演じていた人だ。
あの、いつも咳をしていて体は弱っていたが、魂がイケメンだった人だ。多分、座頭市が映画シリーズの中で最も尊敬していた人だったんじゃなかろうか(だからこそ悲しいことになるのだが)――ほんと、とても高潔な役でね。
この『江戸川乱歩の美女シリーズ』、多分『金田一少年の事件簿』はこれの影響受けてると思うんだけど。エロは必ず毎回あるし、グロいとこはグロいし、あと全体的に怪奇趣味が色濃く反映されている(江戸川乱歩原作だから当たり前だが。金田一少年が金田一耕助テイストをやってるとはいえ、影響受けてると思うとこは多い)、そして必ず作品に『怪人』らしいのが出る、おどろおどろしい世界観。
でもその中で唯一、気高く凛々しく、頭が異常にキレ非道で残酷な犯罪者達にも一切屈しない探偵がいる。それが、天知茂さん演じる明智小五郎なんだね。
多分、天知さんが演じる明智小五郎なら、クトゥルー神話の世界でも余裕で生き残れるんじゃないか。サイレント・ヒルに行っても、平然としてそうである。
常人が発狂しそうな狂気と怪奇の世界。そんな中で、唯一冷静でいられるのは逆を言えば、そいつが最も狂ってるともいえるが――それを体言できるのが、眼光するどき凛々しい顔立ちの天知さんしか、いない
ちなみに、最近見たのはパノラマ島の事件である。『天国と地獄の美女』という題名だ。
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パノラマ島――中年のおっさんが考えたエロスの限りを尽くしたユートピア(妄想の)だが、所詮はおっさんが悶々としていたときに考えたもので、そのユートピアを実現するには途方もない金がかかるらしい。あらゆるとこに「どうです? やってみません?」と声をかけるも悉く失敗(だって、百億円ぐらいかかりますって言うんだもん)。
もちろん、そんな案受け入れるとこがあるはずもなく、妻のヒモになる毎日。しかも、その妻も変な宗教の教祖とできちゃってるし、おいおいと思ってるとこに、一羽のカラスが縁となり、自分と瓜二つの容姿の男――大富豪の人物を知ることになるのだが。
そっくりなら入れ替わってしまおうじゃないかと企んでね。
――だが、大富豪の家では、それとはまた別に遺産の件でごたごたもあって、複数の欲望が交差する。
これ、どうやら正月にやっていたドラマらしい。
(当時のテレビは寛大だ)
最初は明智小五郎が「正月、明けましておめでとう」と言うが、その次のシーンは、パノラマ島のイメージから始まる。裸のねーちゃんがわっしょい! わっしょい! と踊り、花火が打ち上がるという滅茶苦茶、そんなものがお茶の間で流れたというから、ほんと昔は寛大――いや偉大だったと思う。
(俺の世代でもドリフターズのコントとかでエロいシーンはあったけどね)
今では考えられないだろうけどさ……ちょっと寂しいね。
ん、いや、エロが見られないからじゃなくて。いや、それはそれで悲しいんだけど。年々と規制が厳しくなってるのがね。その内、人を殺しちゃ駄目と言われるんじゃないかな。笑えない……。
ともかく、正月の特番だからスケールも話の濃さもすごくてね、いや『美女シリーズ』の入門には適さないと思うが、しかし、ある程度見たら、ぜひとも逃さないで見ていただきたい一作である。ともかく、濃い。人の業も、人の悪意も、ともかく濃い作品である。
そして、一通り見たら、映画秘宝で出してる本もチェックしたい。
冒頭の真魚八重子さんの文からして、必読である。
どれだけ、天知茂さんがすばらしかったか、すごいことをやっていたかも分かる一冊です。
――異常、違う、以上! 蒼ノ下雷太郎でした。