はじめに
*スマホだと、一部表記が乱れる可能性があります。
これまでのまとめ。
前回の話。
I’ll(『7start 2.0』番外編) 第十一話「死亡フラグ」
本編
I’ll 十二話「死にたくない」
035
――敵は、血液をあやつる能力者。
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避けるか、受けて!
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無茶言うな――いや、僕の能力なら敵の攻撃を受けることができる。
全身の一部を硬質化する能力。
といっても強度はそんなに高いわけじゃなく、せいぜい体の一部を銃弾が弾くぐらい硬くする――って程度だ。
それで、充分だと思っていたんだが。
「何か、敵の攻撃が増してないかい?」
僕は背中を向けて全速力で逃げていた。
うしろからは血液を銃弾のように放出させ、攻撃してくる――少女。
灰色のニット帽を被り、短い金髪、端整な顔立ちに薄汚れたツナギを着ていて、バタフライナイフを持って、指から血を流して――男の子のように見える少女。名前は『X』。
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随分と敵は怒ってますね。
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冷静に言わないでよ!
こっちは今死にそうなんだよ!
何だよ、あの連射性! 威力! スピード!
段々と弾く所じゃなくて、衝撃で――。
と、僕の体が回転してしまう。
地面を坂道のように転がる。平坦な道で――慌てて起き上がり、逃走。
敵は倒れてる最中は攻撃しないという誓約でもついてるのか、いやついてるのか? 何もしてこなかった。
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やたらと教義に忠実なのは分かりましたね。
これなら、森の中に隠れた方が良さそうです。
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は?
も、森の中って――な、何で。
……あっ!
僕は言われた通りに森に走って行く。
『逃げるな!』
敵の甲高い声が聞こえてくる。
ひぃっ!!
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彼女の様子だと負傷してるリスを襲いそうにない。
それなら距離を取って逃げた方が効率的。
そう、この障害物の多い森の中まで逃げれば――
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パンッ――パンッ――パンッ――と、高木を貫く音。
樹皮は破壊され、パラパラと落ちた。乾いた破裂音がひびく。
「ばーか! そんなんじゃ当たらないよ、おとこ女!」
余計に怒らせたようだ。
血の弾丸の数が増えていき、乾いた破裂音が増えていった。
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いいですよ。
障害物は見えにくいし、攻撃も貫通するごとに威力が減ります。
そして、敵は自分の血を使っている。
あまり連発すると簡単に倒れてしまうもののはず。それなら、怒らせて平静をなくせば。
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僕にも勝機がある!
僕はひた走り、敵にあらんかぎりの罵倒を――
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嘘っ!?
伏せて、アイル!!
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え、と一瞬だけ僕はとまどうが、ガイドの言う通りにすぐに伏せた。
瞬間――猛吹雪のような血の弾丸が頭上を襲った。
高木は貫通するどころか幹を破壊されたものも多かったようで、いくつか危うく近くに倒れかかってきた。
「ひぃっ!?」
魚の大群のような血の弾丸を一度に放出したX――馬鹿じゃないのか。あんなに、一度に血を使ったら倒れてしまうに――
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いえ、違います。
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敵は、死体の血を使っています。
と、ガイドは言った。
……ん?
……んぅ……。
あ、最初に拘束を解いたときの!
僕は舌打ちをしてしまう。あ、あれから血を――大量にある、血。
もう、死んでるからどれだけ失ってもかまわない。
くそっ、終わったじゃないか。おい!
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いえ、まだ手はあります。
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手なんてないよ!
だって、唯一敵の限界が勝機だったのに、これじゃ!
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あきらめるな!
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どでかい文字がでーんっと表示される。
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いいですか。敵は死体から確かに血を操れます。
しかしそれは、限界があるようです。
見てみなさい、今、血は死体とつながってるでしょ!
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と言われ、僕は這って方向を転換。
Xが佇んでいるのを目撃した。
「――あ、あれは」
まるで赤いロープのようなものが、彼女のわきに浮かんでいる。
あれから、血の弾丸が放出されたようだ。
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あれから、攻撃してるようですね。
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あれを、死体からわざわざ能力で伸ばして――ここまで運んでいるのか。
僕は絶句する。
あ、あれはどこまでいける?
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そう、だから結論としては最初と同じになるんですね。
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逃げろ!
ガイドは言った。
僕は這って進みながら、血の弾丸が頭上を通り過ぎるのを体感しながら、這って這って進み進み――ある程度距離を取ると、低姿勢のまま駆けだして逃げた。
「はぁっ……はぁっ……ひぃっ!!」
血の弾丸は音もなく、風を切る音だけなんで、本当に心臓に悪い。
これが音を鳴らすときは、風や高木など、もうすでに何かを傷つけたあとである。
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距離――距離さえ、取れれば大丈夫なはずです。
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敵は血液を操る能力者。
確かに、それはすごい。
あんなふうにただの血を弾丸のようにするなんて。
――だが、それでもやはり血を操るっていうルールは厳しすぎる。
自分の血だと限界があるし。
他人の血だと、あのようにロープのようにして伸ばさないとダメなんだろう。
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おそらく、元々血が体から離れるとすぐ効力をなくすんじゃないでしょうか。
死体から血を操るとき、ロープのように伸ばしたのもこれが原因。
そして、さっきから弾丸のように飛ばしてるのも、これが理由。
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なるほど、それなら説明がつく。
だが、逆を言ってしまえば、距離。距離さえ取ってしまえば、敵は死体から血を操れなく――いや、完全にとまではいかなくても、操りにくくなれば。
そして、敵が不利な状態になれば、いくらでもやりようは。
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そう、もう少し離れたら簡易的な罠でもはりましょうか。
雑草を利用した足払いや、
あなたの場合は髪の毛を硬くすればワイヤーのようにもなります。
ワイヤーがあれば罠の種類は一気に増えますよぉ。
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やった――。
これで、僕は勝機がやっと見えてきた気がした。
そうだ、あきらめずに戦えばどんな強敵にも勝機が――
「一応、正々堂々のために言うぜ? 真上から殺す」
と言われ、僕が頭上を仰ぎ見ると――
X。
彼女が、血を鎌のような形状に変えて浮かんでいた。
遅れて破裂音。
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しまった。
これが、敵が急に速度を上げて迫ってきた理由!
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巨大な弾丸を作り、それに乗っかって――突撃してきやがった!
僕は、戦慄する。
「あっ――」
あ、死んだと。
「死ね」
彼女の冷たい声が、いつまでも脳裏にひびきそうで――
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