蒼ノ下雷太郎のブログ

一応ライターであり、将来は小説家志望の蒼ノ下雷太郎のブログです。アイコンなどの画像は、キカプロコンでもらいました。

I’ll(7start 2.0 番外編)  第一六話「一人でいること」

 はじめに

 *スマホだと一部表記が乱れるかもしれません。

 

 カクヨムに投稿している「7start 2.0」の番外編です。

 

 これまでのまとめ。

I’ll  まとめ

 

 前回の話。

I’ll(7start 2.0 番外編) 第一五話「探索」

 

 本編

 

 I’ll 第一六話「一人でいること」

 

 044

 

                 <三人称視点>

 

 ワタシはあまり集団が好きじゃない。
 姉は違っていたようだ。あれだけ、自然に大勢の人と笑顔で話ができたのだから――集団が、好きだったのだろう。
 ワタシはダメだ。
 絶対無理だ。
 集団なんて好きになれない……。

 

 045

 

 僕はうれしいのか悲しいのか、どっちつかずの悲鳴を上げた。


「狭い寝床だけど、我慢してね。しなさいよ? ほら、あんたはアリカと寝て」と、リスは言った。


 彼女は風呂場のあとなので、カラダから湯気が出ている。
 肌は桜を散りばめたように火照っている。


「………」


 その、僕と同じ寝床であると言われたアリカはノー反応。
 年齢は僕やリスと同じ十四ぐらいだろう。


 水色のショートヘアー。

 顔立ちは端正で、リスやシャケに匹敵するくらいかわいらしいのだが、表情が乏しいせいか、人形のようであった。笑えばかわいいだろうに、いつも無表情だから不機嫌にも思える。
 カバタ族との一件から、起きてからも僕としては色々なことがあったが、ようやく眠れる――ってときに、大きな障害だ。

 Vの寝床は狭い。

 僕ら下っ端は、最底辺の寝床を与えられていた。
 六畳半ぐらいの部屋に、二つの二段ベット。
 どちらも二段目のベッドがボロボロであり、一段目しか使えない、二段ベットとしては死んでいるも同然である。だから、僕らは一つのベッドに二人で寝なきゃいけないのだが……寝なきゃいけないのだが。
 お、女の子と?
 い、いっしょの部屋で?
 ベットで?

               (interface_guide)
             何、興奮してるんですか。
               この色情ボーイは。
               (/interface_guide)

 

 僕をツッコミする文字が表示された。
 こいつは、ガイド。
 いや、正式な名前を与えてないのも何だが、この地下都市の案内役として僕をサポートする人工AIだ。……AIにしては、あまりにも人間的すぎるけど。

 

               (interface_guide)
             あなたが女の子だからですよ?
      少なくても外見はね。あなたがモテてるわけじゃありません。
               (/interface_guide)

 

 冷静すぎる現実をつきつけるガイド。
 わ、分かってるよ……でもさ。

 その夜、僕はアリカと同じベットで寝た。
 年中、ライトが照らしている地下都市で、暗闇につつまれるのは貴重な時間だ。
 明かりを消すと、部屋は簡単に真っ暗になった。無機質なコンクリートの壁や光を塞いでいる。
「――ぐへっ」
 首を絞められた。
 何事かと思うと、アリカだった。

               (interface_guide)
           そういや、言い忘れてましたけど。
             その子、寝相が悪いですよ。
               (/interface_guide)

 

 はじめに言ってよ!
 やらしいこと考えたから、報復に出たと思ったじゃない!

 

               (interface_guide)
           何考えてるんですかあなたは……。
        ほら、早く絞め技から逃げないと死にますよ。
               (/interface_guide)

 

 わ、わかって……るよ……。


 翌朝、アリカはリスに叱られる。


「あんた、何、新人を殺そうとしてるの!」
「落ち着いて、リーちゃん!」


 シャケが慌てて止める。
 彼女のくせ毛は朝だから余計に乱れている。一応、髪を丸めて寝ていたのだが、それが余計にバネのような力を与えたのか、くるくるとなった状態で、そんな状態でまじになってもおかしいのだが、アリカは意外と真面目に受けとめていた。


「ご、……ごめんなさい」


 しかし、リスが怒り狂って。


「ばーか! ばーか!」というと、我慢できなくなったのか、リスに殴りかかった。


「アイルちゃんも止めて!」
「あ、うん」


 いや、僕は唖然としていて困惑しっぱなしだった。

 

 046

 

 それから数日が経つ。

 僕は合間に訓練をさせられて、五日後ぐらいにはようやく仲間と合流して仕事に参加することができた。


「ここで仕事するとちゃんとご飯が食べられる。それだけじゃなく、昔でいうお金みたいなのもくれるんだ」
「……お金?」


 リスから聞いたとき、はじめは首をかしげた。
 VR世界――過去の日本をモデルにした場所にいた僕からすれば、通貨は見慣れたものだ。しかし、ここではとっくに廃れていたはずだが。


「え、知ってるでしょ? 缶詰よ。缶詰」
「……あぁ、うん。そりゃ、ね」


 缶詰。
 ここでは超長期保存が利く食べ物は、通貨代わりとして役立っている。

 

               (interface_guide)
       昔は食べ物を通貨にしているのは多かったんですよ。
         それほど貴重でしたからね。生きるのに。
      中にはチョコレートを通貨にした国もあるぐらいですし。
               (/interface_guide)

 

 へぇ……と、僕は心の中で相づちをうつ。
 でもこれ、お金としては不便じゃない?
 僕は、リスが持っていた缶詰を見る。いや、一個一個なら小さくて持ち運びしやすい。
 僕の手でもつかめる程度のものだ――ものにもよるだろうが。
 しかし、これが二個や三個、十個や二十個になったら、持ち運びは大変だぞ。
 みんながみんな、家を持ってるわけじゃないし。
 中にはずっと旅をし続ける者もいるだろう。
 いくら超長期保存がきくといっても、これじゃ通貨としては。

 

               (interface_guide)
            だから、銀行がありますよ?
               (/interface_guide)

 

 ぎ、銀行?
 僕は目をうたがった。

 

               (interface_guide)
         地下都市全体共通というわけじゃありませんが。
           街を代表する族は大抵、持ってます。
              もちろん、このVもね。
               (/interface_guide)

 

 何でも、彼らは検査をしてあずかる個人の情報を記録すると、念入りに情報を記載し、そして書類を作るのだとか。銀行に食料をあずけた人は、手帳のような紙を渡される。
 そこには、毎日微妙に違ったハンコを押して、
 そう、不便でしょうがないが、利用者は毎日手帳にハンコを押してもらわなきゃいけない。使用者確認のためだ。

 

               (interface_guide)
        地下都市は何でも出来る能力者がいますからね。
        そう、通帳を偽造できる能力者なんて山ほどいます。
          だから、二狗はこちらも能力者を使い、
         ハンコのカタチを変えられる能力者を捜した。
         そして、毎日違ったカタチのハンコを押させる。
               (/interface_guide)

 

 でもさ。
 それって、大変じゃない?
 不便だと思わないのかな。

 

               (interface_guide)
           それしか有力なのはないですからね。
        他にも七番街で大きな銀行代わりの族は存在します。
       ですがそこは、有力な族しか使用できず、一般人はまず無理。
             これは他も同じですね。
                (/interface_guide)

 

 そこもV並に厳しい審査基準があるらしいが――でも、誰でもOKではない。
 本来なら誰でもOKというのは、それほど厳しいのだ。

 

                (interface_guide)
             よくやってると思いますよ。
           ちなみに、一日でもハンコ押せないと。
   缶詰は没収されるし、偽物判定で下手したら捕らえられる可能性もあります。
                (/interface_guide)

 

 僕はぞっとした。
 どんなディストピアなんだか。

 

                (interface_guide)
          これでも地下都市ではユートピアなんですよ。
                (/interface_guide)

 

 047

 

 訓練を終えて、Vの銀行も使えるようにすると――僕はパトロールに参加した。
 いくらVの制服を着てるとはいえ、子供がパトロールして威圧を与えられるのか。

 

                (interface_guide)
              能力者が多いですからね。
             子供でも脅威ではありますよ。
                (/interface_guide)

 

 また、厳しく指導されてるから信頼もあるようだ。
 ……僕も、すごい厳しくされた。
 訓練と言っても短期間だから、となめられるかもしれない。
 だがそれは、ほとんど一睡もできない訓練だった。
 あれは技術云々を教えるというより、心を一人前の兵士にする作業だった。

 

                (interface_guide)
         悪事を犯す奴は死ねって精神でやってますね。
          実際、昔の軍隊ってあんな感じでしたが。
                (/interface_guide)

 

 僕らは二手に分かれてパトロールすることが多かったが。
 団員は多いんだが、それでもこの広大な三番街をくまなく見回ることは難しい。
 そのため、僕ら四人一組のチームも二組になって別行動することがある。

 

「………」

 

 今日はたまたま、アリカだった。
 ……しかし、無口だな。
 この子から、声を聞いたことがあまりない。

 だがそれは、すぐに叶えられそうな未来になった。
 三番街のゲート付近の大通りを歩いていると――僕らは声を掛けられた。


「殺人が起こったんだ!」


 さ、殺人?
 それは、僕らのような子供じゃなく、名探偵な子供に相談してほしかった。

 

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