蒼ノ下雷太郎のブログ

一応ライターであり、将来は小説家志望の蒼ノ下雷太郎のブログです。アイコンなどの画像は、キカプロコンでもらいました。

そここそが、ここじゃない、どこかへ。の答えなんだと。(『天国にいちばん近い島』 感想)

 昔、書いた小説で、アメリカから脱出して日本に帰ろうとする者達の話があった。

 まぁ、誘拐とかされてアメリカに連れてかれてね。(舞台は未来の架空のアメリカである)

 で、主人公はアメリカで殺し屋の組織に拾われて殺し屋になる。

 でも、ある日、死にかけの少女と出会ってすごい日本に帰りたい気持ちにさせられるんだ。

 彼女は、日本の風景が映った写真をにぎりしめてた。別に大した写真じゃない。そこら辺の何気ない街角を撮っただけの写真だ。そんなものを、少女は至極大事そうにしていた。命よりも大事なんじゃないかってくらい、大事にしてた。

 少女も、立場は違えど境遇は同じだったんだね。アメリカに無理矢理連れて来られて、日本に帰りたいと。

 そして、主人公は少女を連れて組織から脱走する。

 紆余曲折あれど、追っ手と戦いながら主人公はアメリカを脱出。

 でも、日本に着くと自分らは冷たい目で見られ、しかも少女は死んでいて……「日本に……帰るんだ」と、日本に着いたのに言う。というラストで終わる。

 

 

 ――というのを、ある新人賞に送ったら「ないわ!」と一次で落ちてね。

 けっ、と思ったが。

 

 さて、『天国にいちばん近い島』を見た。

 

       
          天国にいちばん近い島)4 - YouTube

 

 サイトの感想見ると、けっこう評判わるいのかな。

 俺は見てて楽しめた。

 主人公の心情と成長に、はげしく共感したのもあるが。

 

 いや、俺が生まれる前の映画だし。

 原田知世と言われてもちんぷんかんぷんなのが、正直なとこだ。

(ほんと、『時かけ』などの角川映画のイメージしかない)

 でも、主人公が天国にいちばん近い島を求めるのがね。とても共感した。

 彼女は幼い頃に、父親から天国にいちばん近い島の話を聞かされるんだ。それは、おとぎ話のような不思議な島だったけれど。彼女はそれにすごく憧れる。そして、父が死んだ日、その島に行かなきゃと思い、旅に出る。(すごい行動力だ)

 

 といっても、天国にいちばん近い島がどういう島かは分からない。名前どころか、具体的な場所も教えてもらってないから。だから、かなりイメージが覚束ないまま、それっぽいツアーに参加するんだね。

 で、ツアーに参加してるんで本当は無茶はできないんだが、ツアーの団体行動から外れて一人で勝手にブラブラしたりするんだ。(迷惑な奴だ)

 でも、そこで日本で得られない経験をするんだ。

 

 その島――ニューカレドリア島か。

 そこで暮らす日系人の少年と出会う。それだけじゃない、同じく日本人でツアーコンダクターなのか? あれは。『セーラー服と機関銃』のように年上で頼りがいがある男が出てくるんだ。でも、そっちの男は別れてまだ未練がある女がいるらしく、主人公は軽い失恋(正確にはどこまで感情が芽生えたか不明だが)をする。

 だから、というわけではないが、日系人の少年の方に心が移っていく。

 何か、こう書くと殺伐とした物語に思えるが。

 そんな暗い話ではない。というか、女、男、関係なく、恋愛なんてそんなもんだろ。誰彼関係なくときめいて、軽い失恋や、恋心を勝手にする。

 

 また、日系人の少年の話を聞くと、彼も主人公に似た想いを抱いていたことが分かる。

 いや、恋心もそうなんだが。それではなく、――彼は日本に想いを馳せていたんだね。

 そう、主人公(原田知世)が求めていた天国にいちばん近い島と同じものなんだよ。日系人の少年――『ありがとう』が日本語で一番美しいと感じる少年にとって。

 だが、主人公は最後の最後までそれを見つけられなかった。

 でも話の途中で、日本からこの島の近くで潜水艦が沈没して死んだ日本兵の――奥さんが現れて、彼女の話も聞いていく内に、(もちろん年上の男の失恋もあるが)恋愛とは何なのかを深く考えるようになる。

 最後は、もう二度と会うことはないだろうけど。

 日系人の少年と最後の別れを交わす。

「ここが、私の天国にいちばん近い島よ」と。

 そして、少年も。

「あなたが、僕の求めてた日本です」と。

 

(実際、こんな感じだったか? まあ、大体のイメージだ)

 

 そして最後に二人は向かい合って、「ありがとう」とハモるんだね。

 これがまた、美しかった。

 

 

 ここじゃない、どこかへ。

 ある種の解放に近い感情って誰にもあることだよね。俺はいつでも持ってる。今すぐでも埼玉を出たいよ。いや、埼玉をダ埼玉と言う奴はブッ殺すけど、でも誰よりも埼玉を憎んでるのは俺かもしれない。どんなに生まれ故郷が大切だとしても、やっぱ出たい気持ちは変えられないんだね。

 ここじゃない、どこかへ。

 それはどこにもないのかもしれない。望んだ場所なんて。理想なんて。

 机上の空論どころか、机の上にもない、それこそただの妄想なのかもしれない。

 だが、それでも――それでも人は探し続ける馬鹿者だろうし。それでいいのだろう。そうでなきゃ、何のために生まれてきたのか。それを改めて考えさせる映画だった。

 そして、最後に出た答えは父親が言っていた――じゃない。あの海を越えたら――でもない。

 当人が本当に心の底から大事と思える――そんな場所こそが、そここそが、ここじゃない、どこかへ。の答えなんだと。

 最後はうっとりしてしました。

 

 主人公は最初は暗くてね。『あまちゃん』のアキちゃんのように、鈍くさくてドジでいつもだんまりしてる。と、散々な言われようだったんだけど。

 最後は、「おかあさん、何だんまりしてんの」と言い返したりしてて。笑ってしまった。

 これは少女の成長の話でもあり、同時に自分も何かを得られた話なのではと――うん、朝っぱらから何を語ってるんだろかって話だが。

 ともかく、いつか俺もここじゃない、どこかへの答えを見つけたいね。

 以上、蒼ノ下雷太郎でした。それでは、それでは。

 

天国にいちばん近い島 デジタル・リマスター版 [DVD]
 
天国にいちばん近い島 by サントラ (アーティスト 演奏),原田知世 (1991-06-15)
 

 

 ちなみに、この映画のエンディング曲もすごいキレイでね。

 それこそ、映画に何度も出てくる蒼い海のような歌でね――おすすめです。