蒼ノ下雷太郎のブログ

一応ライターであり、将来は小説家志望の蒼ノ下雷太郎のブログです。アイコンなどの画像は、キカプロコンでもらいました。

人を喰った映画ならぬ、心を喰った映画

 友人に、「俺、死ぬときは誰か周りに人がいっぱいいるとこで死にたい」という奴がいる。

 で、そいつの理想がコンビニで死ぬことなんだが。

「いやもう、今死ねよ」と、迷惑だから、思わずキレてしまう俺であった。

 

 俺自体が変な奴だからか、俺は変な奴を呼び寄せる力があるようだ。

 あれか、スタンド能力者のようなものか?

 そいつの本名はありきたりなので、そいつの呼称は馬鹿ということにしておこう。

 馬鹿は他にも迷言というか、伝説を残している。

 授業中に見た夢で、パイレーツオブカリビアンの夢を見ただとか。

 (俺は当時、ゲーム系の専門学校に行ってたんだが)

 ゲーム制作の企画をみんなつくる時間があって、一人ずつ発表するんだが、そいつが提案したゲーム企画は魚同士が戦う格闘ゲームで、演説の下手さもあって見事に誰からも選ばれなかった。ある意味、ここまで清々しいものである。誰が、アジやマグロの戦うゲームを望むというのか。ノリでやってみたい! という人はいるだろうが、そいつらは絶対十分も経たないうちに後悔するのは目に見えている。

 

 で、そいつとよく俺は連んでいた。

 他にも友達数名で固まっていた。

 普段は友達グループを複数行ったり来たりしていたのだが、その学校ではいつも固まっていた。……まあ、ね。うん……。

 ともかく、よく連んで遊んでいたが映画を見に行ったりも多かった。

 あれだ、ゲーム系の学校に行ってたからゲームが原作の映画が多かったね。

 サイレンとか……あれ、本当につまらなかった。……いや、途中まではよかったかな? だが、オチがほんと最悪でくそだったが……無駄に馬鹿が反応して、そっちの方が怖かった。

 いや、例がまずいな。おもしろかった映画は、サイレントヒルか。

 

 

       
        SILENT HILL (the movie) -- TVCM in Japan Part2 ...

 

 馬鹿は、俺がカラオケでDIRENGREYを歌ったときは引いてたくせに、こういう映画は好きだったんだ。奴はこれがはじまるのをキッカケに事前にゲームをプレイしていたが、俺はホラー系はとことん苦手だったのでしなかった。(見るのは良い)

 で、ほとんど情報無しに見たのだが、いやぁおもしろかった。

 

 原作は、サイレント・ヒル。

 全世界累計で840万本以上は売り上げているという、怪物ソフト。

 そう、まさしく怪物ソフトだ。

 シリーズは結構出ているのだが、どこも舞台は荒れ果てた廃墟の街だったり、そして出てくるのは異形の怪物が多い。TVCMだけでも分かるだろう、澁澤龍彦がよだれを垂らすような、常軌を逸した怪物がわんさか出てくる。

 

 映画は、第一作目をモデルにしている。

 アメリカの田舎にある町を舞台にしていて、主人公が来たときにはもうゴーストタウンと化していた。

 本来なら、こんなとこに用はなかったはずだが、主人公はどうしても来る必要があった。

 そう、娘のために――

 

 日頃、妙なつぶやきをして深夜を寝ながら徘徊してしまう娘。で、その娘がブツブツと何かをつぶやくことが多い。『サイレントヒル……』だから、サイレントヒルとう町に行く必要があった。

 それで車に乗って田舎まで走るのだから随分と行動的な主人公だ。

 あ、ちなみに主人公は娘の母親である。

 そう、この映画はゲームと所々変更点がある。まず一番大きいのは、主人公の性別だろう。

 ゲームではプレイヤーが感情移入しやすいように、おそらくは男性にされている。

 だが、映画では女性に変更されている。(これがホント、ナイスな案でね。ゲーム原作の中には原作レイプとしか言いようのない変更はあるが、これは見事な変更点だった)

 ホラー映画で男が出る場面はそこそこある。しかし、やはり主役となっておもしろいのは女性だ。男だと、怪物が出て悲鳴を上げるともう少しがんばれよ。と、思っちゃうわけだ。(ホントはこれはいけないのかもしれんが)それこそ、物語の途中で泣き言を言って崩れ落ちたら文句の一つや二つ言いたいくらいになってしまう。それが少しでも誤魔化せるだけでもね……いや、それよりも、母親というキーワードが、この作品でかなり芯となるから、主人公の行動自体が作品をより際立たせるのだ。

 主人公はサイレントヒルという町で、突如異世界のような場所に来てしまう。

 先ほどまでいたゴーストタウンとは違い、異形の怪物達がいる世界。

 そこにしか娘はいないのだと知ってはいるが、誰も助けはこない。夫も心配でサイレントヒルに来たが、異世界にいるので助けようがない。(これは絵で具体的に説明される。このシーンがまた辛いのだが)

 サイレント・ヒルに出てくるのは、おそろしく、強い、異形なものばかりでね。

 怖いというより、もはや本能的な怯え。クトゥルー神話のような世界なんだ。

 だから、思わず膝を伏して崩れ落ちるシーンもある。だが、この主人公は立ち上がる。

 娘を助けるために。

 もう、その姿がとても美しく気高く、かっこいいんだよね。母は強しを地でやっていてね。

 

 あとあと話の展開も、町にはあやしげな新興宗教もいて。

 で、それが娘の行方にもつながっている。

 昔、娘とよく似た少女が彼らにより――ってのも分かってくる。

 さらに言えば、そのよく似た少女――その子の母親も出てくるのだが。

 

 最後は、血を血で洗うどころか血で血を塗りつぶしさらにその上に血を塗りたくるような大虐殺がはじまる。(それもまぁ、とことん追いつめられたからの犯行なんだが)

 

 監督のクリストフ・ガンズって人は、原作ゲームの大ファンでね。

 今回の映画化も、本人がかなり意気込んでPRして監督の座を勝ち取ったらしいが。

 冒頭の、主人公が町の中を進む場面は、まるで原作ゲームを直接コピーしたかのようにそっくりなのだ。(かといって、全てコピーするだけじゃなく、ちゃんと映画として見せるのも忘れない。主人公の性別転換の他に、1では出てこない2の強敵など、映画を盛り上げるための変更点は数多い)

 ……まぁ、これの続編はこの監督じゃなかったから、反応は、まぁ……。

 しかし、当時の俺と馬鹿は大いに感動してね。

 いや、確かにどギツイラストではあるんだけど、でも感情のうねりというか。

 主人公の母親の戦う意志もかっこいい。そして、敵のここまでなってしまった心情も、理解できる映画なのだ。あれだ、呪怨のラストに出てくる負の感情のなれの果てみたいな怪物――あれができるまでを、もっと論理的に、観客が感情移入しやすいようにしたのが、サイレントヒルのラスボスだ。そう、心の中がめっちゃくちゃにやられてしまったのだ。

 馬鹿はその後、DVDも借りてしまう始末で。

 俺は映画の主題歌(というか、日本版だけのタイアップなのかな)、土屋アンナの曲にはまりまくってね。その後、NANAの曲にもはまるのだが……

 

 サイレントヒルで見させてくれたラストは、未だに俺の中で生き続けていると思う。

 いや、最初は馬鹿の話で枕にしてこの結末はどうかと思うが。ともかく、サイレントヒルは原作ゲームもおもしろいが、映画も第一作は相当おもしろい映画だった。

 鑑賞後、ファミレスで映画の感想を語り合ったのも良い思い出だ。

 友達と映画を見るのは多かったが、大抵、ドラマの劇場版が多く、帰りもファミレスに寄ることはなかったが……。