I’ll 第十話「決着」(7start 2.0 番外編)
はじめに
*スマホでは一部表記が乱れる可能性があります。
これまでの話。
前回の話。
本編
I’ll 第十話「決着」
031
ガイドが作戦を提案した。言うだけなら――簡単なものといえる。
子供にも分かりやすい――とても、単純な作戦だ。
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まず、起き上がってください。
それも大きく叫んで。
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「うわあああああああああああっ――!!」
喉が張り裂けそうなほど叫んだ。
一度咳き込んでつっかえても、またすぐにうわあああああっ――と叫んだ。
そして、起き上がって駆け出す。
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そしたら、撃たれますから。
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撃たれた――。
撃たれたのは、背中。
人体の中では大きな的であり、同時に人体の大事な部分を傷つけやすい――脊髄、臓器、背骨、腹を撃つよりやばそうな場所がいくつもある。だから、ある意味では心臓が広範囲に及んでいるようなものだ――だが、僕にはそれは効かない。
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全身の一部を硬くする能力。
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正確には全身のほぼ半分を硬質化した。
足や背中、敵の死角になるであろう前方向は無視して、背中などを重点的に硬くした。
おかげで――弾丸を喰らっても多少ふらついただけだ。
「うわああああああああああああああっ――」
駆ける。
まだ、駆けられる。
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そしたら、今度は足を撃たれますから。
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撃たれた。
右足のふくらはぎ――衝撃で、硬くはしていたが足がもつれてしまい、転ぶ。
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で、多分敵もすぐに気付いたでしょうね。
あなたの能力は体を硬くする能力――だって。
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だったら、ヒザやヒジなど関節を狙えばいい。
関節だけは構造上、硬くしても意味がないのだ。
そして、ガイドは言った。
僕が倒れている間に――敵は、仕留めにかかるだろう。
……呼吸が、ひどく……長く感じられた。
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命がつながりましたね。
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咆吼――とまではいかないが。
銃声に匹敵するほどの衝撃音が鳴り響いた。
空間を貫いて敵を吹っ飛ばす。
透明だったはずの敵は――地面を転がりながら姿を現す。右肩を打たれたようで、彼は苦悶の表情で肩をおさえていた。
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三発も撃てば、居所は分かりますよ。
勝因は敵の油断。
あいつはリスが死んだとばかり思っていた。
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そして、僕はまた起き上がって駆け出す。
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でも、相手も死んではいないでしょう。
まだあなたを撃つかもしれません。
軽くトドメはさしておきましょう。
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具体的に言うなら、何か飛び道具で黙らせようとガイドは言った。
しかし、投げるものなんて近くには――あ。
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そう、小屋の破片を使えばいいんですよ。
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032
<三人称視点>
油断していた……。
透明男は、片方はもう殺したと思っていた。
だから、無駄に三発も撃ってしまった。
銃というのは動きながらじゃろくすっぽ当たりはしない。だから、牽制以外――ちゃんと敵に当てるのを目的とするなら、立ち止まって撃つより他はない。
だから、三発も撃ったということはその間、自分の居場所を「ここですよー」と宣伝するようなものだ。
そこを狙い、リスが近くにあったもの――木片を放ち、攻撃した。
柱の一部だろう。殴るには丁度良さそうな長方形の木材を弾丸にした。
右肩にひびが入ったようだ。舌打ちする。この戦闘じゃ、もう使い物にならない。
「………」
そして、問題はあの少女だ。
三つ編みの……弾丸を喰らっても平気だった子。
背中や足を撃っても平気そうなのを見ると、やはり体を硬くする能力者か。厄介な――だが、そうなるとこれは作戦の一部だったのか。
しかし、それには仲間が生きていないと話にならない。
あの状況下で――まだ、仲間を信じられたというのか。
透明男はガイドの存在を知らなかったので、余計にアイルのことを畏怖した。
「だから……」
だからこそ、今この場で殺さなきゃと確信した。
あの子は、絶対この戦いのあと――族に災いをもたらす。
族を縛るは絆の力。それは呪縛であり、生命線。
「……し、死んで……くれ」
死なないよ。
そう言うかのように、角張った木材が再び透明男にヒットした。
今度は顔面だ。
「――くはっ」
衝撃でもんどり打ち、彼は気絶する。
033
「やった、やったぞ!」
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ほら、いいから早く助けて。
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僕は透明の敵を倒した。
正直、もう終わりだと思っていた。新手も来るって話だったし。
だが、まだ戦って十分ぐらいしか経っていない。超スピードで倒すことができた。
これなら――これなら、リスを連れて逃げ出すことも可能だ。
もう、これ以上の戦いなんてごめんだ。新手は一人で好き放題やってくれ。
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――え?
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と、ガイドは不吉な声色で何かに驚いていた。
「え、おい。どうしたんだよ」
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そんなっ――敵はもう、こちらに来ます。
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来るって……一体何……まだ、十分くらいしか。
あと、十分は余裕があるって。
――神経が震える。
僕は、ふとその殺気が飛ばされた方向に振り向いてしまった。
「……あ」
灰色のツナギを着た子供。
ニット帽を被り、金髪をその中でまとめていた。
端正な顔だが――頬には動物の牙の絵が刺青されていた。
右腕には黄色い布を巻いている。
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八番隊大将の子の一人――
『鮮血』のX。
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それが、僕の前に現れた新手だった。
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