はじめに
*スマホだと一部表記が乱れる可能性があります。
カクヨムに投稿している「7start 2.0」の番外編です。
これまでのまとめ。
前回の話。
本編
I’ll 第十四話 「墓場」
039
――カラスが、三番街のノザキ邸に赴く。
「ちゅー」
カラスに合わぬ、鳴き声を発して。
040
クジラの葬式が執り行われることになった――といっても、ここにいるのは数人しかいない。
僕と、リス。そして、あのとき歓迎会で来られかった二人。
アリカと、シャケだ。
「………」
アリカ。
水色のショートヘアーの少女。
年齢も、体格も、リスと同じぐらい。
顔つきもリスと同じように整っていて、かわいらしいはずなのだが、表情が乏しいからか尖っているように見える。
彼女は眼鏡をかけていた。
いや、眼鏡をかけていたのあとに書くと関係してるように思われるが、関係はないが――彼女は、クジラの妹だ。
今は、悲しみをこらえてるのか。それとも、敵に怒っているのか。よく分からない。
『友よ……今までありがとう』
ノザキ邸から離れた雑木林の一角。
そこに、団員専用の墓地があった。
死体は近くの専用焼却炉で焼かれ、ここで壺に入れられて埋葬される。
墓の証として、木材でできた十字架が立てられていた。
「……墓、か」
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あっちでは見ることなかったでしょ。
(/interface_guide)
その通りだ。
VRでは、そもそも人が死ぬ・生きるって感覚が希薄だ。
だって、仮想現実にいたから。ずっと。
「ねーねー、クジラちゃん何で死んだの? 油断してたの」
「あ、あんたねぇ……」
不謹慎に声を上げているのがいた。これが、シャケという女の子。
彼女は一つ年上らしいが、あまりそうは見えない。
ピンク色の髪で、もふもふと綿飴のようにくるまっている。髪の量自体は多く、長さも肩から先まで伸びているのだが、もふもふし過ぎて感覚が分からなくなる。
……あと、胸が大きい。
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えっち。
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うるさいよ。
――いや、それはいいとして。
この子、静かにできないのかな。
仲間が死んだのに、不謹慎というか。
(interface_guide)
いえ、これでも悲しんではいます。
というか、死生観って露骨に文化の違いをあらわしますね
(/interface_guide)
……ん?
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ここはシビアですよ。
平気で人の生き死ぬがある。
部隊の仲間だけが先に集まって
あとは暇な者が勝手に来るシステムも
効率を重視したため。
ようするに、死に対してあなたほど悲しがっていないのですよ。
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そ、そんなぁ。
僕はショックを受ける。
クジラの顔や――声を――だって、このアリカっ子だって。悲しそうに。
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いえ、だから悲しがってないわけじゃなくて。
この子の心の中は知らないですけど。
何というかですね……泣かないんですよね。
(/interface_guide)
な、泣かないって。
そんな、おかしいよ。大切な仲間が死んだのに、そんな。
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毎日起こってることに
そんなリアクションを?
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そのとき、僕に衝撃が走った。
――慣れ、なのか?
墓に、花がそえられる。
リスやシャケ、アリカは両手を合わせてお祈り。
ちなみに、さっきまでお経のようなのを唱えていたのは二狗さんだ。
団員の弔いは、主に彼がやっている。
「………」
僕もクジラに両手を合わせた。
――カタキはとるからね。
ふと、声がした。
見てみると、シャケが真顔でクジラの墓に語りかけていた。
「………」
真顔といっても、普段の表情と変わらなそうだ。今日の晩ご飯は何? と言いそうな、ごくありきたりの表情。
その顔で、彼女は敵をブッ殺すということを言ったのだ。
仲間のカタキをとる。敵の死をもって――
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悲しがってはいない。
だけど、キレてはいる。
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それが、三番街の――いや、地下都市の死の弔い方だった。
「………」
一人、リスはシャケの言った言葉に、悲しげな表情を浮かべていた。
NEXT → 第一五話「探索」
さいごに。
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