蒼ノ下雷太郎のブログ

一応ライターであり、将来は小説家志望の蒼ノ下雷太郎のブログです。アイコンなどの画像は、キカプロコンでもらいました。

I’ll (7start 2.0 番外編) 第十四話 「墓場」

 はじめに

 *スマホだと一部表記が乱れる可能性があります。

 

  カクヨムに投稿している「7start 2.0」の番外編です。

 

 これまでのまとめ。

I’ll まとめ

 

 前回の話。

I’ll  第十三話「夢」

 

 本編

   I’ll 第十四話 「墓場」

 

 039

 

 ――カラスが、三番街のノザキ邸に赴く。

 

「ちゅー」

 

 カラスに合わぬ、鳴き声を発して。

 

 040

 

 クジラの葬式が執り行われることになった――といっても、ここにいるのは数人しかいない。
 僕と、リス。そして、あのとき歓迎会で来られかった二人。
 アリカと、シャケだ。

「………」
 アリカ。
 水色のショートヘアーの少女。
 年齢も、体格も、リスと同じぐらい。
 顔つきもリスと同じように整っていて、かわいらしいはずなのだが、表情が乏しいからか尖っているように見える。
 彼女は眼鏡をかけていた。
 いや、眼鏡をかけていたのあとに書くと関係してるように思われるが、関係はないが――彼女は、クジラの妹だ。
 今は、悲しみをこらえてるのか。それとも、敵に怒っているのか。よく分からない。

 

『友よ……今までありがとう』

 

 ノザキ邸から離れた雑木林の一角。
 そこに、団員専用の墓地があった。
 死体は近くの専用焼却炉で焼かれ、ここで壺に入れられて埋葬される。
 墓の証として、木材でできた十字架が立てられていた。
「……墓、か」

 

             (interface_guide)
          あっちでは見ることなかったでしょ。
             (/interface_guide)

 

 その通りだ。
 VRでは、そもそも人が死ぬ・生きるって感覚が希薄だ。
 だって、仮想現実にいたから。ずっと。

 

「ねーねー、クジラちゃん何で死んだの? 油断してたの」
「あ、あんたねぇ……」


 不謹慎に声を上げているのがいた。これが、シャケという女の子。
 彼女は一つ年上らしいが、あまりそうは見えない。
 ピンク色の髪で、もふもふと綿飴のようにくるまっている。髪の量自体は多く、長さも肩から先まで伸びているのだが、もふもふし過ぎて感覚が分からなくなる。
 ……あと、胸が大きい。

 

            (interface_guide)
              えっち。
            (/interface_guide)

 

 うるさいよ。
 ――いや、それはいいとして。
 この子、静かにできないのかな。
 仲間が死んだのに、不謹慎というか。

 

           (interface_guide)
       いえ、これでも悲しんではいます。
   というか、死生観って露骨に文化の違いをあらわしますね
           (/interface_guide)

 

 ……ん?

 

           (interface_guide)
          ここはシビアですよ。
        平気で人の生き死ぬがある。
       部隊の仲間だけが先に集まって
      あとは暇な者が勝手に来るシステムも
          効率を重視したため。
  ようするに、死に対してあなたほど悲しがっていないのですよ。
           (/interface_guide)

 そ、そんなぁ。
 僕はショックを受ける。
 クジラの顔や――声を――だって、このアリカっ子だって。悲しそうに。

 

           (interface_guide)
     いえ、だから悲しがってないわけじゃなくて。
       この子の心の中は知らないですけど。
      何というかですね……泣かないんですよね。
           (/interface_guide)

 

 な、泣かないって。
 そんな、おかしいよ。大切な仲間が死んだのに、そんな。

 

          (interface_guide)
         毎日起こってることに
         そんなリアクションを?
          (/interface_guide)

 

 そのとき、僕に衝撃が走った。
 ――慣れ、なのか?

 墓に、花がそえられる。
 リスやシャケ、アリカは両手を合わせてお祈り。
 ちなみに、さっきまでお経のようなのを唱えていたのは二狗さんだ。
 団員の弔いは、主に彼がやっている。
「………」
 僕もクジラに両手を合わせた。

 

 ――カタキはとるからね。

 

 ふと、声がした。
 見てみると、シャケが真顔でクジラの墓に語りかけていた。
「………」
 真顔といっても、普段の表情と変わらなそうだ。今日の晩ご飯は何? と言いそうな、ごくありきたりの表情。
 その顔で、彼女は敵をブッ殺すということを言ったのだ。
 仲間のカタキをとる。敵の死をもって――

 

            (interface_guide)
           悲しがってはいない。
           だけど、キレてはいる。
            (/interface_guide)

 

 それが、三番街の――いや、地下都市の死の弔い方だった。

 

「………」

 

 一人、リスはシャケの言った言葉に、悲しげな表情を浮かべていた。

 

 

 NEXT → 第一五話「探索」

 

 

 さいごに。

 

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