寸前でふんばれたのはある少年の姿があったからな気がする(王様ランキング 感想)
この前、会社で怒りにかられることがあり、もう、激おこな状態だったのだが。激おこという表現で大分マイルドにしようとしてるが、もうカラダがくたくたで、くたくたになると、怒りは原動力じゃなく重りにしかならなくて、辛いよりも先に悲しいが来て、精神的に倒れそうになるが。
それでも、寸前でふんばれたのはある少年の姿があったからな気がする。
話題沸騰の『王様ランキング』である。
Web漫画から有名になった作品、だっけか。
主人公は王子様なのだが、昔から耳が聞こえず、言葉も話せなくて、さらにチカラもあまりなく非力で、王子様なのに周りからバカにされる少年。
この少年――ボッジというが、しかし、この子がそれでもがんばり、やがてそれに感化されて仲間になる者が現れたり、成長していく、王道ストーリーである。
王道というと、どうしても単調という言葉もセットに見られがちかもしれないが、そうではなく、そんな生やさしいものではない。
いや、筋だけだとシンプルなんだけどね。
ただ、登場人物のありようというか、描き方が複雑というか――いや、逆にリアルだ。
よく、物語に登場する者はキャラクター論でいわれるように典型的な型だったりする。怒りんぼは怒りんぼ、嫌な奴は嫌な奴、クールはクール、優しい子は優しい子。
でも、現実は違う。
いつもは怒ってばっかの人にも心穏やかな瞬間はあるし、嫌な奴も四六時中嫌な奴ではない。優しい子だって、悪事を全くしない人なんているだろうか。
王様ランキングでは、ただでさえ主人公が無力なのに、優しそうな人が裏切ったり、逆に嫌な奴と思っていた人が良い人だったり(しかし、良い人すぎて人の悪意に鈍いところがあり、結果的に悪い人がやるよりもタチ悪いことになったり)、優しい敵がいたりと、複雑だ。
しかし、現実ってこんなもんだよね。
世の中、型におさまる完璧なタイ焼きばかりじゃなく、実際は型からはみ出たり、足りなかったりする者がほとんどだ。
物語に登場する人物は写真で一瞬を切り取りされただけにすぎず、実際はそれだけではない。王様ランキングでは、物語でありながらも、本来なら見ようとしなかった心の欠片さえも見せようとする。
あまりにも残酷で過酷な現実、でも、だからこそ、何もチカラがない主人公のボッジが倒れても立ち上がり、成長していく姿は泣けてくるし、勇気をもらえるのだ。
こういう描き方は日本だけじゃなくアメリカのエンタメでも増えてきているが。
いや、本当は昔から描いている人はいたと思うけどね。純文学でも何でも。しかし、多くの人に見てもらうべきエンタメ作品で、複雑怪奇な現実世界のような人間の精神を描くようになったのは、シンギュラリティのような分岐点じゃないかとも思う。
それも一国だけじゃなく、世界中に広がってるようでね。(多分ね)
登場人物達に真摯に向き合い、心の奥底まで描くリアルな描写だからこそ、俺のように現実で嫌なことがあったとき、それでも立ち上がった主人公の姿を思い浮かべるのだ。
現実にはない、幻でしかない物語。
そんな物語が、現実にいる誰かを助ける。
クウガの先生みたいなことを言うが、それって素晴らしいことじゃないか。
余談、みたいな話になるが。
ある、ドキュメンタリー的な漫画で、カルトにはまった母親とその家族を描いたのがある。
その母親が幼い子供にもカルトを教え込もうとするのだが、その子供はあるものにより、守られる。
作中でデザインを見る限り、それって『仮面ライダー』なんだよね。(多分、ゴースト)
宗教要素が強いゴーストがカルトから子供を守るのは、不思議ではあるが。
カルトにはまった母親が必死にカルトを教え込もうとするのだが、それよりも仮面ライダーの方とおもしろい! と、微動だにしないのが、その漫画で泣いたとこなんだ。
現実には何もない物語、それが、誰かを助けることもある。
少なくても、仮面ライダーは子供の心を守ったんだよね。
そして、王様ランキングという漫画で勇気をもらった人もいる。俺なんだけどね!
非力な少年が挫折を乗り越え、成長していく姿は誰よりもカッコイイ。勇気!
俺も、そんな物語が描きたいな。
以上、蒼ノ下雷太郎でした! した!