『骨壺』の記事で、面白そうって言ってくれる方がいて。感激しております。
どうも、蒼ノ下雷太郎です。
……昔は、自分はことあるごとに「小説か……」と呟いてたものですが。
最近はあまり言わなくなりました。
何が悲しいかって、昔は、何ていえるほど呟いてないんですよね。そうか、もうそんな昔なのかと。段々と想いが枯れてきてるようで、ほんと悲しいです。
……さて、『オーガストウォーズ』の紹介です。
(何か、ちょっと重々しいな……)
ロシア版、パシフィック・リムといわれることも多い今作ですが、実際は大分違います。(ギレルモでいうなら、ほんと『パンズ・ラビリンス』の方が近い)
あるサイトでは、『ライフ・イズ・ビューティフル』のようだと言ってましたね。
ライフ・イズ~は、ナチス占領下の時代に父親と息子が収容所へ連れてかれるのですが、父親が笑いの力でもって息子を死ぬまで励まし続けるという、名作映画ですが。
確かに、この映画はそれに近いです。
いえ、『オーガストウォーズ』は父親ではなく、母親ががんばるのですが。
あらすじ。
話の中心は、ある母親と息子。
軍人である元夫に、息子をよこしてくれと頼まれる。しかし、母親は新しい再婚相手も見つかりそうだし、あんたのとこは紛争が起こりそうじゃない、と最初は嫌がります。
でも、息子はロボットの空想に浸って再婚相手になつかず、じゃあ少しの間――再婚相手とイチャイチャする間でも、息子を元夫のとこにやろうとするんですが。
それを嘲笑うかのように、元夫のとこで紛争が起きて――
最初は母親があんまり好感持てないんですよね。
確かに息子はロボットの空想に浸りがちでね。
冒頭でも、息子の空想(コスモボーイというヒーローになりきる)からはじまって――車で話そうとするときだって、母親の話をロクに聞かないでね。通り過ぎる車をロボットに見立てて空想してるって有様。
それにしたって、大事な息子を放って男のトコに行くなんてひどいですが。
いや、親だって人間だから気晴らしが必要といってもさ。
案の定、男も男でろくな奴じゃなく、(こんな奴のために私は息子を……)と後悔し、母親は紛争のニュースを聞いて、慌てて元夫のとこへ行って、息子を連れ戻そうとする。
ま、これが現実なら少しは救いがというか。
紛争が起こるとはいえ、父親もいるし大丈夫だろ、ちょっと物騒なだけと思うかもしれない。
でもこれ、アクション映画だしね。
まず、母親が現地で乗ったバスがミサイルで大破。(正確には直接受けたんじゃなく、余波を受けて)
命からがら助かったあとは人の良い軍人に息子のとこまで、途中まで運んでもらってね。
よし、ここからまたどうしようかと思ったら、またここでミサイル、爆撃。
館に逃げ込むが、館も大破し。
途中、また違う人に助けてもらって車に乗り込むけど、それも途中何度も大破しそうになって――と、もう波瀾万丈の道を進むことになる。
それでも、やっぱり母親だからね。親だから。
周りが深刻になるにつれて息子だって危ないじゃないかとより力が増すのが、見てて泣けてくるんだ。序盤のダメさも一気に払拭するぐらい。
――いや、それでも母親の前にふりかかることはひどすぎるけどね。
紛争が起こるから危ない――ってレベルじゃなく、紛争のど真ん中を通る状態で。
息子がいる場所は、普通は行こうとしないから、従軍記者と偽って(これも策を講じて記者用パスを手に入れて)順軍する。
そこでも、彼女の周りがほとんど死んじゃうんだ。
従軍記者も、軍人も、そして敵だって――大勢の骸が重なる。
しかも、途中彼女は気を失うんだが――おそらく、強姦されてね。気がついたら、女性達が集まってる場所で目が覚めて助かってたんだけど。限界まで追いつめられて。
だけど――息子には携帯電話を持たせて、それで最初からちょいちょい話やメールはできてたんだけど。
息子の悲鳴のようなのが聞こえてきてね、打ちひしがれてる場合じゃない! と。
そそくさと準備して、また出発するんだ。
もうほんと、最初は嫌な奴だったんだけど。ここまでくると、かっけぇ、あんたかっけぇよ。グロリアだよ、目が潤んでくる始末。
こんな彼女を目にすると、軍人達もいてもたってもいられなくなってね。
とくに、バスが大破したときに途中まで運んでくれた軍人――彼とはその後も、運良くいっしょになって行動を共にするんだが。
この人も、実家に体を悪くした母親がいてね。途中母親が心配で電話をかける孝行息子なんだけど。
だからだろうか、息子のために命をかける彼女を放っておけなくて――。
と、ここまで来たら、もういくら無力な民間人といえども。
奇跡が起きて、どうにか息子の元に辿り着き、助け出すことができるんじゃないかと思える――けれど、息子は息子でかなり深刻の事態でね。
まず、父親と祖父母は、息子の目の前で戦車に撃たれて爆死。
息子は慌てて家の中に隠れて潜むけど、敵も最初はわざわざ子供を殺しには来ないんだけど、辺りは刻一刻とつんざく音が増えて、爆発も増えて、途中頭に怪我までしちゃってね。しかも、家に火まで点いちゃって――もうこれは駄目なんじゃないかと、観客をハラハラさせるんだ。
それでも、母親は懸命に電話で息子を励ましてね。
今すぐ行く、大丈夫だからと。だから、コスモボーイ。がんばれと。
励ますんだ。
そう、息子が空想に浸っていたあのコスモボーイと何度も叫んでね。
だから、母親が息子の元に現れたときは、最初(空想での)相棒のロボットの姿と重なってね。
完全にヒーローと同化してるの。
(いや、最終的にはヒーローではなく、お母さん、と呼ぶんだけど)
虚構と現実。
「心が叫びたがってるんだ。」でも語ったことだが。
どんなに虚構がキレイでも、所詮は虚構だ。
攻殻機動隊のように、虚構と現実の区別がつかないと言われても、実際は虚構が現実を覆うなんてことはありえない。虚構は助けちゃくれない。
それをアリアリと見せつけるかのように、息子の前で父親が殺されてね。
どんな空想のヒーローも、現実では9mmの弾でさえ死ぬんだ。
911の前に打ちひしがれたアメコミヒーローのように。
実際は現実に何の影響力も及ばさない。
息子を嘲笑うかのように、現実は戦車は出るわ、爆撃、爆撃、銃弾と容赦ない。
それでも――それでも――子供のために、ボロボロになりながらも立ち上がる人がいる。
それが、どれだけ、どれだけ感動的なことか。
虚構は確かに無力だ。
だが、このままじゃ終われないと。
一応、アマチュアとはいえ創作に関わるものとしては、感動を禁じ得ない映画だった。
創作に関わる者は絶対見るべし! って映画でした。
一応、この映画で起きた紛争は、2008年に起きた南オセチア紛争を元にしてるらしく。
ロシア側から描いてるため、敵にだって事情があることは描いてないんじゃないか――とい言われたりもするんだけど。
ま、確かにほとんどの視点はロシア側なんだけどね。
でもね、一応途中、敵の視点というか。母親が敵に助けられるシーンも出てくるんだ。
瀕死の息子を連れ出して、あと一歩ってところで捕まって。
だけど説得して――相手も、瀕死の子供、そしてそれを救おうとしてる母親を見殺しにできなくてね、何と途中まで送り届けて貰えることんあった。
そう、ロシア側で母親を助けてくれた軍人のように、敵や味方の軍人だってそれぞれ家庭がある親がいるってことを描いている。
だからこそ、より戦争なんてクソ喰らえ、ってのが激しく伝わる良い映画だと、俺は思います。これ以上に、反戦映画なんてないんじゃなかろうか。
もう、俺、これを書いてる段階でボロボロ泣いてる有様だが。
ほんと、おすすめです。
どこか近くのレンタルでも何でも、鑑賞していただけたら、と思います。
以上、蒼ノ下雷太郎でした。
俺も理想という名の虚構のために、がんばろう!
次回予告――『デレマス 最終回』の感想を書きます。
今回から、『小説家になろう』でやってたみたいに、次回予告なんて書いておきます。
ブログで次回予告って、思うかもしれないけど。
ま、試しにね。
いつ更新するか分からない……てか、ちゃんとデレマス見逃さないでいられるか、ってのも怪しいけど。
……が、がんばるよ。