この前、『ハッカーと画家』を読んだ。
- 作者: ポールグレアム,Paul Graham,川合史朗
- 出版社/メーカー: オーム社
- 発売日: 2005/01
- メディア: 単行本
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これは、webに発表されたエッセイを翻訳したものかな。
これだけ言うと企画ものっぽいが、相手はハッカーである。
内容としては、士朗正宗さんの著作のように雑学が頻繁に噴出し、その上、欄外にやたらと書かれた文章も書いてるんだ。これを含めるとほんと長大な本だけど。
でも、語るだけ語って芯がないわけじゃなく、むしろ確固たる芯がある。
いや、語ってることはライ麦畑みたいなんだけどね。
あれよりも、しかりと土台はある感じ。それはハッカーという確かな力があるからか分からないけれど、でも土台はあった上で、自分はこの世界には歩み寄れないと分かっている。分かっているからこそ、仮想の世界が好きだと断言してるんだ。
一応、ワナビとはいえ創作に関わる者だからとても共感してしまった。
そう思うと、ほんとに攻殻機動隊はハッカー文化に強く根ざしてるんだなと思う。
単行本のラストとか、あれハッカーの理想なんじゃないかと思うね。(いや、あそこら辺は『ニューロマンサー』の影響もあるんだろうが)
『すべてがFになる』も、言ってしまえばそれが全ての話だ。
四季博士に完全ドン引きし、まるで彼女のしたことは讃えられていると非難の声もあったけれど。
いや、違うんだよ。理解できない人にはとことん理解できないかもしれない。
でも、理解できる人から見てもやっぱり四季博士のやったことは最低で最悪なんだ。
だけど、それでも、彼女が目指した領域というのは憧れてしまうんだ。
退屈で、つまらく、くだらないしがらみばかりの現世。
そんなものがない、何もない自由な世界。
昔はそれがヒッピー文化によって支えられ、目指されたのかもしれないけど、今はひたすらな怠惰の末だ。それでも、やっぱりいつの時代でもみんな夢見ちゃうんだよね。理解しろとは言わないが、安易に否定するのもどうかなと思う今日この頃である。
ここじゃないどこかへ、を望むように現世じゃない世界を望む。
昨今では異世界転生やVRMMORPGがそうだろうか。
SAOで、あのラスボスが最後に崩れる城を悲しそうに見つめていたのも、個人的には否定できないんだ。だって、そもそも物語を創ること自体が、彼の信条とひどく似通っているから。
現実に満足してるなら、創作なんてしないよね。
以上、蒼ノ下雷太郎でした。
したぁ。