昨夜、【クリムゾンピーク】を見てきた。
んぅ、正直微妙だった。
いや、背景美術はやっぱりすごいんだ。
『ヘルボーイ ゴールデンアーミー』など、おそらくはスターウォーズの酒場シーンを見て感動した世代のように、細緻に描かれた小道具やファンタジーの住人達に魅了された人は多いと思うが。今作もともかく細緻で、虜になる。
このような感覚は『ロードオブザリング』の映画でも思った。(監督違うが)
正直言うと、俺はあんまりファンタジーに興味はない。
だって、俺が生まれた頃といえば『スレイヤーズ』があり『魔術師オーフェン』があり『ロードス島戦記』があった。ありすぎたと言ってもいい。エルフやゴブリンなんて、今更聞いても「あ、そう」としか思えず、あまりにもありきたりなものとなってしまっている。
(いや、上であげた作品が悪いんではなく、作品単体としてはすごい好きなのだが)
それこそ、二十や三十はファンタジー作品があったんじゃないか?
だからこそ、FF7の登場は当時としてはかなり画期的で、(ファンタジー作品で、企業・レジスタンス・ロボット・バイクが出るのだから)はかりしれないものがあったんだ。
だが、そんな俺でも『ロードオブザリング』はおもしろかった。
何故かといえば、背景や人物や衣装やら、ともかく全てが細緻に描かれてたからだ。
宮崎アニメの『紅の豚』の、飛行機工場のシーンなどを例にあげればいいだろうか。
細緻に描かれたものって、人はどうしても魅了されてしまう。
細部に神が宿るからなのか、それとも神の方こそ細部の世界に魅了されたからなのか。
今作もそれに匹敵する細緻で鮮麗な背景美術なんだが――。
いや、じゃあそれ以外に何があるのかというと、ない……な。
幽霊という言葉がキーワードとして出てくるが、実際はそれほど作中で意味があったように見えなかった。単なる小道具でしかなかった気がする。
愛って言葉も度々出てくるが、これに出てくる愛って。ほんとに、一言であらわせる愛なんだな。私はあなたを愛しています。その一文で、大体が説明できるような。あふれるような情念って、一言では――というか言葉では言いあらわせない世界を言うんじゃないかな。
増村保造監督の『卍』や『刺青』しかり。
他にもキム・ギドクだったり成瀬巳喜男だったり溝口健二だったり、例を挙げたらキリがないけど。情念って、言葉って檻じゃつかみきれないあやふやなもの、それこそ霧や水を捕まえるようなものじゃないのかな。だからこそ、そのあふれんばかりの情念を人は見て感動するんじゃないかと思うんだが、正直それが今作にあったのかどうか。
後半なんてただのバトルものじゃないか。
てかあのラスボス、あの衣装なのに動き早いなおい。
……ただ、背景美術はほんとすごいんでね。
三~四階くらいはある縦にふきぬけの広間、天井は破れて灰のようなものが桜の花びらや雪のように舞い落ちていく。階段は四角にらせんを描き、また各階ごとに立柱があって――と語れば語るほど際限がないのだが、肝心の中身はどうかという問題だ。
山田太一が脚本をつとめた作品なんて演技が細かすぎてびっくりするものだったが。(『シャツの店』など)
いやまぁ、ギレルモ監督でこれを言った他の作品もそうなんだけどさ。
日本でもこういう人いるけど。
んぅ。
以上、蒼ノ下雷太郎でした。